【ニューヨーク=宮本岳則】米モルガン・スタンレーや米フィデリティ・インベストメンツなど米欧金融9社は7日、証券取引所を米国に新設すると発表した。投資銀行や運用会社、超高速取引業者(HFT)など市場参加者が自ら取引所の運営に乗り出すことで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)など大手既存グループによる寡占に歯止めをかけ、手数料コストの削減を狙う。

新証取の名称は「メンバーズ・エクスチェンジ(MEMX)」となる見通しだ。2019年中に監督当局である米証券取引委員会(SEC)から認可を得たい考えで、早期の取引開始を目指す。MEMXは注文形式の複雑さを取り除いたり、最新の技術を導入したりして、市場参加者が取引所に支払う接続料や売買手数料、市場データの利用料の引き下げを実現するという。

新証取の出資メンバーには多彩な顔ぶれが並ぶ。機関投資家向けサービスに強い米欧金融グループからは、米モルガンや米バンクオブアメリカ・メリルリンチ、スイスのUBSが参加する。個人向けに強みを持つ米証券会社からは米チャールズ・シュワブや米Eトレード、米TDアメリトレードが参画。これにHFT大手の米シタデル・セキュリティーズと米バーチュ・フィナンシャル、大手運用会社の米フィデリティが加わった。

米国の株式取引は、インターコンチネンタル取引所(ICE)を親会社に持つNYSEと、米ナスダック取引所、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)の3グループにほぼ集約されつつある。米国全体の1日あたり株式売買高をみると、3グループ傘下の取引所に6割の売買が集まっていた。「HFT排除」で有名になった独立系の新興証取、IEXのシェアは2.4%にとどまる。

市場参加者からは取引所の寡占化で、売買コストが高止まりするとの懸念があった。人工知能(AI)などを活用したコンピューター取引の普及で、価格情報などマーケットデータの重要性が高まるなか、取引所に支払うデータ利用料が増えていることに、一部で不満の声が出ていた。今回の取引所新設は、データ提供事業を新たな収益源にしようとしている既存の取引所をけん制する狙いもありそうだ。

既存取引所は静観の構えを見せる。米CBOEグローバル・マーケッツの市場部門共同責任者、ブライアン・ハーキンズ氏は「米国は世界で最も競争の激しい市場」と指摘した上で、新規参入を歓迎するとコメント。ナスダックの広報担当者も「新取引所が提供しようとしている価値について、もっとよく知りたい」と述べた。7日の米株式市場では競争激化が嫌気され、ICE株が前週末比3%安となった。

2019/1/8 13:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39744090Y9A100C1EE9000/