政府が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を25日の閣議で決めていたことが26日、明らかになった。捕鯨に反対する国との意見対立が解消できず、現状では商業捕鯨の再開が困難だと判断した。脱退によって日本の領海や排他的経済水域(EEZ)での商業捕鯨に道が開ける。ただ国際機関からの離脱で諸外国の批判が強まる懸念もある。

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政府は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決定した=日本鯨類研究所提供

脱退方針は26日、正式に発表する。IWCの規定では脱退を来年1月1日までに通知すれば同6月末に離脱することになる。IWCはクジラの保存と捕鯨産業の秩序ある発展を目的に1948年に発足。現在は89カ国が参加する。日本は51年に加盟した。

IWCは資源保護を理由に82年に商業捕鯨の一時中止(モラトリアム)を決めた。日本は異議を申し立てたものの、88年からは商業捕鯨を中断している。

日本はIWCから離脱することで、同団体が保護対象とするミンククジラなどの捕鯨に道が開け、日本近海などで約30年ぶりに商業捕鯨を復活できる。一方で、南極海に船を向かわせてクジラをとる調査捕鯨は国際法上、実施できなくなる。

IWCは日本などの捕鯨国とオーストラリアなどの反捕鯨国との間で意見対立が続き、長年にわたって議論が前に進まない状況にあった。

日本はマグロなど他の水産資源と同様に科学的なデータに基づいて食料として持続的に利用できるよう訴え、今年9月のIWC総会では資源量が豊富なクジラの商業捕鯨を再開するよう提案した。ところが反捕鯨国は「いかなる捕鯨も認めない」と宣言し、反対多数で否決された。

日本は「IWC締約国としての立場の根本的な見直しを行わなければならない」と反発。これまで脱退も含めた対応を検討していた。自民党内でも捕鯨推進を掲げる議員から、IWCからの脱退を求める強い要請が政府に出されていた。

反捕鯨国からはすでに批判の声が相次いでいる。オーストラリアのプライス環境相は「あらゆる形の商業捕鯨と、いわゆる『調査捕鯨』に反対する」と表明。「我々は日本が残留することを望むが、脱退の決断は日本の問題だ」としている。

反捕鯨団体「シー・シェパード」の豪州組織は日本の脱退を「極端な行動だ」と強く非難。「商業捕鯨を終えるべきだという国際世論に背いている」と強調している。一方で、捕鯨国の政府関係者からは、日本の方針に理解を示す声もある。

もっとも、かつて年20万トンを超えた日本の鯨肉の消費量も、ここ数年は年3千〜5千トンで推移している。仮に商業捕鯨が再開したとしても、国内の鯨肉消費が盛り返すかどうかは不透明だ。

2018/12/26 10:24
日本経済新聞
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