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武田薬品工業は臨時株主総会を開き、アイルランド製薬大手シャイアーの買収を決議した(5日午前、大阪市住之江区)

武田薬品工業は5日、大阪市内で臨時株主総会を開き、アイルランド製薬大手シャイアーの買収を決議した。創業家の一部が反対していたが株主の過半を占める機関投資家が賛成し、株主全体の3分の2以上の同意を得た。2019年1月にも7兆円弱を投じる巨額買収が成立し、売上高世界トップ10に入る日本発メガファーマ(巨大製薬会社)が始動する。

臨時総会は5日午前10時にインテックス大阪(大阪市)で始まり、約850人が参加した。2時間半かけて買収の是非を議論し、行使された議決権のうち、90%近くが同意となったもようだ。

クリストフ・ウェバー社長は総会の冒頭で買収の意義を説明。「年間4000億円以上の研究開発投資が可能になる。世界でも競争力のある水準だ」と述べ、新薬の研究開発や営業面でも規模の拡大がメリットをもたらすと強調した。

質疑応答に先立ち、事前に株主から受けた質問に対する回答が発表された。有利子負債の削減計画に関連し、買収から3年後には統合によるコスト圧縮効果が年14億ドル(約1600億円)に達することや、非中核資産の売却を進めることを説明した。

会場からは巨額買収の効果や世界市場における武田の立場を問う質問が相次いだ。ウェバー社長は「日本市場は縮小しており、世界的な存在感がないと研究開発で勝てない。日本のグローバル企業になる」と回答した。

武田薬品は5月、シャイアーに約460億ポンド(約6兆6000億円)での買収を提案。買収の対価は現金約3兆円と4兆円相当の新株でまかなう計画で、臨時総会には新株発行を取締役会に委託する議案を提案した。すでに米国や欧州、日本、中国の主要市場の当局から独占禁止法上問題ないとする承認を取得済み。シャイアーが日本時間5日夜に開く総会で同意が決まれば具体的な買収手続きに入る。

武田薬品の株主構成は機関投資家が計66%で過半を占める。武田薬品のOBらでつくる「武田薬品の将来を考える会」や、武田薬品の社長、会長を務めた武田国男氏が反対を表明していたが、機関投資家が賛成したことで買収が認められた。実現すれば単純合算で連結売上高が3兆5千億円の企業となる。

臨時総会の会場には個人株主らも詰めかけた。東京都の50代男性株主は「武田が日本一といっても世界では20位くらいだ。研究開発費などでスケールメリットが得られ、買わないリスクの方が大きい」と話した。愛知県犬山市から3時間かけて来たという67歳の男性は「国内市場が飽和する中で海外に打って出るのは必要なことだ」と買収に賛成する考えを示した。

午前8時に会場に一番乗りした80代の男性は「乗りかかった船だから賛成する」としつつ「買収提案後にシャイアーはがん治療薬を切り離しており、大丈夫なのかとも思う」と製品領域への不安も口にした。京都府精華町の80歳男性は「大きな借金を背負うことになり、本当にうまくやっていけるのか。新薬開発などでシナジー効果が生まれるのかも気になる」と話した。

2018/12/5 12:26
日本経済新聞
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