A消費税増税で大企業減税

法人税について政府税制調査会は2007年11月に発表した『抜本的税制改革に向けた基本的考え方』のなかで、法人実効税率に関して同調査会が行った国際比較について、

「課税ベースや社会保険料負担も考慮した企業負担については、我が国の企業負担は現状では国際的に見て必ずしも高い水準にはないとの結果も得た」

と記述している。

政府は法人税減税の必要性が低いとの判断を示していたわけだ。

その後に主要国の一部で法人税率引き下げ等の変化があった点には留意が必要だが、日本では消費税増税関連法が制定された2012年度以降、大規模な法人税減税が実行されてきた。

消費税増税の賛同を得るために巨大資本に利益供与が行われたと見ることができる。

消費税の最大の問題点として指摘されるのが逆進性である。

所得税が「能力に応じた課税」の考え方をベースに、所得の少ない階層には税負担を求めず、所得が増大するに連れて高税率での税負担を求めるのに対し、消費税は高額所得者と無所得者に同水準の税率が適用される。

このため、低所得者層にとっては、極めて過酷な税負担が発生している。

法人税負担、所得税負担が大幅に軽減される一方で、消費税負担が急激に拡大してきたことが、日本の格差問題を拡大させてきた重要な一因になっている。

これらの状況を踏まえれば、消費税増税がいかに間違った政策であるのかは明白である。

金持ち優遇税制の温存

しかも、税収規模が不変であることは、これらの税制変更が、財政再建や社会保障制度の財源確保に大きな貢献をしてこなかった現実を浮かび上がらせている。

個人に対する最低保障水準が極めて高い欧州とは異なり、日本における、政府がすべての国民に保障する最低生活水準は極めて低い。

この状況下で消費税率をさらに引き上げることは、国民の生存権を脅かすことにつながる。

他方、所得税制度は累進税率制度により、所得の高い国民に高い税負担率を求めることが建前となっているが、実際には所得が増えるに連れて税負担率が低下する現実が観測されている。

高所得者においては金融所得のウェイトが高く、この金融所得に対して低率の分離課税が認められているからである。

消費税増税を実施するなら、金持ち優遇の根幹である金融所得の分離課税を見直すことが必要であったが、安倍内閣はこれを見送った。

格差拡大に対する批判が強まるなかで、安倍内閣は格差拡大をさらに推進する政策を実行していることになる。