【天津=原田逸策】中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は19日、中国・天津で講演し、下落傾向にある通貨人民元について「人民元の為替レートは中国の意図的な措置ではない。人民元の下げは害のほうが大きい」と述べた。人民元のさらなる下落を望まない考えを示した発言だ。

 世界経済フォーラムが主催する夏季ダボス会議で講演した。

 李氏は「中国は人民元の切り下げを通じて輸出を刺激する方策はとらない。あまり利益を生まないからだ」と語った。「競争的な切り下げを実施するのではなく、人民元を安定させ、市場志向の為替改革を進める」と強調した。さらに「中国は外貨準備も潤沢で元レートを安定で均衡した水準に維持できる」と述べた。

 中国の首相が元の為替水準に言及するのは極めて異例。「中国が元の引き下げで追加関税による打撃を抑えている」とトランプ米大統領が批判していることを意識した発言とみられる。

 講演ではほかにも米中貿易戦争を意識した発言が目立った。

 李氏は「知的財産権の侵害は厳しく取り締まっていく」と強調。米国は知財侵害を名目に追加関税をかけている。さらに「ビジネス環境の改善を続ける。平等に中国市場にアクセスできるように、中国企業も外資企業も平等に取り扱う」とも語った。許認可手続きなどで地元政府の嫌がらせを受けた場合は「ぜひ私どもに申し立ててほしい」と呼びかけた。

 中国は米国への対抗措置として追加関税をかけているが、李氏は「関税率は下げていく。平均関税率はさらに下げられる」と述べた。関税全般の水準を下げることで、米国の批判をかわす狙いとみられる。

2018/9/19 13:11
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35511630Z10C18A9MM0000/