トルコのエルドアン大統領は12日、北東部トラブゾンで演説し「自分が生きている限り、金利のわなには落ちない」と述べた。通貨リラの相場安定のため不可欠とみられる中央銀行による政策金利の引き上げに否定的な考えを強調した。金融市場で失望が広がり、トルコの債券や株式から一段の資金流出を招く恐れがある。欧州や他の新興国への波及も懸念される。

 米国との対立が原因でリラの対ドル相場は10日、一時前日比約2割急落したが、エルドアン氏は「政治的陰謀」「降伏はしない」などと語り、強硬姿勢を崩していない。

 トルコ中銀は景気を冷やす金融引き締めを嫌うエルドアン氏の圧力下にある。現在の政策金利は17.75%だが、リラ安の影響でインフレ率が16%近くに達しており、市場関係者はそろって利上げの必要性を指摘している。中銀は前々回、6月の金融政策決定会合での利上げを最後に金利を据え置いている。

 エルドアン氏は12日の演説で「政治的主権を放棄しろというのか」と述べ、国際通貨基金(IMF)に支援を仰ぐ選択肢も退けた。

 トランプ米政権は2016年のクーデター未遂事件に関与したとしてトルコで拘束中の米国人牧師アンドルー・ブランソン氏の即時解放を求め、1日以降、トルコ閣僚を対象とする経済制裁や関税倍増で圧力を高めている。

 エルドアン氏は「テロ組織とつながるのある牧師と引き換えに(人口)8100万人のトルコを犠牲にするのか」と猛反発した。トランプ政権が8日を最終期限に定め、ブランソン氏解放を迫っていたことも明らかにした。
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