中国が3日に公表した米製品に対する追加報復関税に液化天然ガス(LNG)が含まれたことで、両国の貿易摩擦に新たな側面が開かれた。これによってトランプ米政権が提唱するエネルギー輸出の大幅拡大構想の雲行きが怪しくなりかねない事態が出現した。

トランプ政権はこれまで繰り返し、積極的に世界中に化石燃料供給を増やしていく姿勢を打ち出しており、国内の原油と天然ガスの増産を促すため規制緩和を進めてきた。

しかしバークレイズのエネルギー市場調査責任者マイケル・コーエン氏は「世界最大級のエネルギー消費国(である中国)が米国産エネルギー輸入の障壁を引き上げつつある局面で、米国がエネルギー(輸出)の超大国になるのが難しいのは明らかだ」と指摘する。

米国はガソリンやディーゼルといった燃料の輸出規模が世界最大で、LNGについても来年までに世界屈指の輸出大国になる勢いがある。昨年のLNG輸出額は33億ドルだった。

一方中国は、今回報復関税対象にLNGを正式に加える前から、既に過去2カ月間で米国からのLNG輸入を抑制してきた。中国の原油輸入先でも米国はカナダに次ぐが、ここ数カ月は米国から中国への出荷が落ち込んでいる。

2016年2月から今年5月までに中国は米国産LNG全体の約14%を購入したものの、6月に米国から中国に到着した輸送船は1隻にとどまり、7月はゼロ。今年1─5月は計17隻を受け入れていた。

厦門大学のLin Boqiang教授(エネルギー論)は「米国のガス業界は、中国を将来の大きな市場とみなしているのに、今でも中国がごく少量しか輸入していないので、報復関税でさらに大きな打撃を受けるだろう」と話した。

世界の石油出荷動向を調べているクプラーによると、7月の米国から中国への原油輸出量は推定日量22万6000バレルで、過去最高だった3月の44万5000バレルから減少している。

国際エネルギー機関(IEA)の石油産業・市場部門責任者ニール・アトキンソン氏は、中国は報復関税の影響で米国からの輸入が減った場合、サウジアラビアやロシア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラクなどからの購入を拡大する公算が大きいと予想した。米国に代わって中国に販売を持ちかける国が出てくるため、中国は穴埋めが可能になるという。

米国では今後1年─1年半で需要が急拡大すると見越して、なお25社前後が新たなLNG輸出ターミナル建設を目指している。ただ関税問題でこれらの企業は、建設計画のための資金調達に必要な十分な買い手の確保という面で制約を受けるかもしれない。

現在米国内で稼働する2つの輸出ターミナルのうちの1つを保有する米LNG大手シェニエール・エナジー(LNG.A)の広報担当者は「当社は引き続き中国を、成長市場で米国とウィンウィンの関係にある存在と考える」と強調し、関税は生産的ではないと付け加えた。

アラスカ州では全長800マイル(1287キロ)のパイプラインを通じて天然ガスをターミナルまで移送し、そこでLNGにして中国に輸出する総額430億ドルのプロジェクトが進行中だ。

これを手掛けるアラスカ・ガスライン・デベロップメントは3日、実際にアラスカのLNGが中国に輸出できるようになる前に米中貿易摩擦が解決されると信じていると期待を表明した。

Reuter
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