2018年7月26日 22:14 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO33468740W8A720C1FF8000?s=2

【カイロ=飛田雅則】サウジアラビアの原油タンカーが25日、紅海を航行中にイエメンの武装組織「フーシ」の攻撃を受けた。ロイター通信などが報じた。これを受けてサウジは紅海を経由した原油の輸送すべてを一時的に停止した。イエメン内戦でサウジなどが戦闘を強化しており、フーシが反撃に出たもようだ。サウジと、フーシの後ろ盾のイランとの対立が激しくなる懸念がある。

サウジメディアによると2隻のタンカーがイエメンの港湾都市ホデイダ沖を航行中、フーシから攻撃を受けたという。1隻に軽い損傷が出たものの、負傷者や原油流出は発生していない。フーシは系列のテレビを通じ、サウジのタンカーを標的にしたと表明したとの情報もある。

攻撃を受けてサウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は「状況が明らかになり落ち着くまで、紅海のバブルマンデブ海峡の船舶の航行を一時的に止める」との声明を出した。紅海はサウジ産原油の重要な輸送ルートとなってきた。そのため停止が長引けば、原油市場の混乱を引き起こすおそれがある。

サウジ産原油の輸送が停止したと伝わったことで、原油市場には供給不安が広がった。ロンドン市場に上場する北海ブレント原油先物は26日、前日に比べ約1%高い一時1バレル74ドル後半まで上昇した。

イエメンをめぐっては、イランが支援するイスラム教シーア派のフーシと、同教スンニ派のサウジが中心のアラブ諸国の連合軍が後押しする暫定政権の部隊が、2015年ごろから内戦を繰り広げている。中東各地でにらみ合うサウジとイランの「代理戦争」の舞台となっている。

原油や貨物の輸送ルートが脅威にさらされているとして、サウジが主導するアラブ諸国連合軍は6月、フーシが支配する西部の港湾都市ホデイダの奪還作戦を始めた。すでにアラブ連合軍は空港を制圧。現在は港の奪還に向け大規模な作戦を展開している。

サウジ側の攻勢を受け、フーシが反撃に出たもようだ。イランはこれまでフーシにミサイルなどの武器を提供してきたと指摘されている。サウジ側から報復などの動きは出ていないが、イランとの緊張が高まっている。