アルゼンチンのブエノスアイレスで21日開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は初日の討議を終えた。米国発の貿易戦争について、各国から懸念する声が相次いだ。日本政府は中国人民元の下落について問題を提起した。資金流出が続く新興国からは欧米の急激な利上げを警戒する声も上がった。

会議では6月の主要7カ国(G7)首脳会議に続き、米国発の貿易戦争が主要な争点となった。世界経済のリスクへの対応について議論する場では、ほぼすべての国から貿易戦争が経済に及ぼす影響について言及した。

会議では為替問題も取り上げられた。トランプ米大統領は20日に「ドル高が我々の競争力を奪っている」として、貿易戦争の範囲を為替市場にも広げつつある。

ムニューシン米財務長官は21日、会議を前に記者団に対し、人民元安などについて「為替操作の有無などを注意深くみている」と発言。米連邦準備理事会(FRB)の利上げで新興国から資金流出が続く中、中国人民元は対ドルで4月から約7%下落した。人民元安は輸出振興につながるだけに、ムニューシン氏は「為替介入の結果なのか、市場力学によるものなのか、注意深くみている」と疑いの目を向けた。

こうした中、麻生太郎財務相は「先進国で金融政策の正常化が行われる中、中国を含む新興国の通貨下落が資本流出圧力を招き、世界金融市場のリスクとなり得る」と発言。人民元安について「米利上げ以外の要因もあるのでは」(財務省同行筋)という見方もある中、中国側に対し、説明を求めた。会議の場でこの問題を取り上げたのは日本だけで、米国からは人民元についての言及はなかった。

新興国からは欧米の金融緩和終了が自国経済に与える影響についての発言も相次いだ。ブラジルのグアルディア財務相は会議後の記者会見で「金融政策の正常化や貿易の緊張、地政学上のリスクは特に新興国の脅威となっている」との見方を示した。

米国の利上げで新興国から資金流出が続く中、ブラジルでは通貨レアルが対ドルで年初来から約14%下落した。会議の開催国であるアルゼンチンでは通貨ペソの下落率は32%に達し、国際通貨基金(IMF)への支援要請を余儀なくされた。会議にはトルコやインドなど通貨下落に見舞われた国も参加しており、FRBを念頭に、急激な利上げを懸念する声が出た。会議は22日まで2日間の日程で開催する。

2018年7月22日 10:08 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO33262910S8A720C1000000