中国人民銀行(中央銀行)が金融システムへの流動性供給を増やし、中小企業への信用供与を強化している。負債圧縮の取り組みによる借り入れコスト上昇で製造業生産や設備投資が鈍化し、元から景気の勢いが失われつつあったところに米国との貿易紛争が追い打ちを掛けたためだ。

人民銀は今後も一段と金融緩和を進める見通しだ。

事情に詳しい関係者が18日明らかにしたところによると、人民銀は市中銀行向けの流動性促進策を導入する方針。銀行に融資拡大を促し、地方政府傘下の資金調達会社である融資平台(LGFV)や企業などの発行する債券への投資を増やすのが狙い。

人民銀は中期貸出ファシリティー(MLF)により豊富な流動性を供給することも確約しており、特に「AAプラス」以下の格付けの債券に投資する金融機関を対象にしているという。

流動性の改善を受けて銀行の短期借り入れコストは下がり、指標とされる7日物レポ金利は19日に2.6409%と、6月末時点の最近の高値から37ベーシスポイント(bp)低下した。

銀行間金利の低下と銀行支援の強化で体力の弱い企業は資金繰りに対して掛かっている圧力が和らぐとアナリストはみている。

光大新鴻基のアナリストチームはノートで「投資適格級債への逃避にさらされている投機級債券市場にとって朗報に違いない。一部の企業は資金逃避の影響で流動性へのアクセスが困難になっている」と指摘した。

ゴールドマン・サックスも19日のノートで人民銀の流動性強化策について、「こうした動きが事実ならば、5月と6月の弱い社会融資総量(TSF)統計、6月の軟調な企業活動、資産市場の低迷、貿易紛争の激化を受けて、政府が金融緩和策を強化している証左だ」と分析。「政府は成長の安定を確保するため、銀行預金準備率のさらなる引き下げなど対応を強化する見通しだ」とした。

もっとも、市場は中国政府が果敢に金融緩和を進めるとはみていない。政府が幅広く負債の圧縮を進める方針を明確に打ち出している上に、強力な金融緩和は人民元安を招き、資本流出を引き起こす恐れがあるためだ。人民元は既に貿易紛争への警戒感から売られ、19日には1年ぶりの安値に沈んだ。

焦点は雇用の8割を占め、借り入れコスト上昇や与信縮小で打撃を被っている中小企業だ。

中国南部の国有銅精錬会社のトレーダーがロイターに明かしたところによると、借り入れ環境が引き締まったため、この企業は在庫を処分して資金を調達する最終的な手段を取ったという。

このトレーダーは「銀行から融資を受けられるが、金利が上がっている」と話した。

2018年7月21日 / 14:49 /ロイター通信
https://jp.reuters.com/article/china-centralbank-easing-idJPKBN1KA05Y