[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
象徴的な意義というものはしばしば、シビアな「金の威力」の前には存在がかすんでしまう。
それこそが、日本と欧州連合(EU)が17日署名した経済連携協定(EPA)が持つ不幸な運命だ。

日欧EPAは世界各国の合計国内総生産(GDP)の約3割を占め、世界最大の自由貿易圏を生み出す。
貿易障壁は上げるだけでなく、下げることもできるのだという好ましい見本でもある。
しかしその恩恵となると、トランプ米大統領が今後発動する恐れがある輸入自動車向けなどの関税がもたらす打撃に比べれば、
ほんのわずかでしかない。

日欧EPAに署名した各国がメリットを強調したがるのは、
貿易摩擦激化が輸出と世界のサプライチェーンを破綻させかねないと企業が懸念している時期だけに、良く分かる話だ。

同EPAが完全に発効すれば、チーズやワインといったEUの日本向け輸出品の関税はおよそ99%が撤廃され、
EU欧州委員会の試算では最大10億ユーロの関税負担を欧州企業は節約できる。
日本側も、EUに輸出する自動車と大半の自動車部品などの関税がなくなる。
これによりEUと日本のGDPは長期的にそれぞれ0.8%ポイントと0.3%ポイント押し上げられる、とEU当局はみている。

ただしそうした恩恵も、米政府がこれまで示唆している追加関税を実際に発動した場合に世界経済が被る痛手の前では、
あまり意味がなくなる。トランプ政権は既に、新たに2000億ドル相当の中国製品に関税を課す方針をにじませ、
輸入自動車に25%の関税を適用することも検討中だ。
ピーターソン国際経済研究所によると、この輸入自動車関税は2080億ドル相当の完成車が対象となる。

そうなると国際通貨基金(IMF)が16日、
現在米国が示している通商政策とそれに対する貿易相手国の報復措置が実現すれば、
2020年までに見込まれる世界の年間GDPが0.5%ポイント下振れする可能性があると警告したのも無理はない。

このマイナス効果は、ほとんど象徴的な日欧EPAでカバーするにはあまりにも大き過ぎる。

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