電気自動車(EV)向け需要が高まるとの見方を背景に、コバルトとリチウムの価格が上昇しているが、一部の投資家は見通しについて冷ややかな姿勢を保っていると語る。

電池に利用されるこれらの金属は、供給が不足するとの懸念から価格が過去3年間に2倍以上に上昇したが、バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチはリチウム市場が「深刻な供給過剰」になると予想。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、同社がEV製造に利用するコバルトの量は「ほとんどゼロ」に近づくとの見通しを示している。スバルとマツダは現時点で引き続き従来型自動車に重点を置いている。

資産運用会社ティベリウス・グループのクリストフ・エイブルCEOはインタビューで、「コバルトを巡る常軌を逸した状況は多くの点で修正されるだろう」と指摘。「将来テクノロジーがどのように応用され、実際にどの程度置き換えられるかについては、非常に不透明感が強い。リチウム使用のかなり少ない電池ができると予想される」と述べた。

マイケル・ウィドマー氏らBofAメリルリンチのアナリストによれば、2025年までにリチウム生産は81万5000トン増え、需要の増加幅である46万トンを上回る可能性がある。同行によれば、増産により炭酸リチウムの価格は1トン=1万ドルと、今年これまでのアジアでの平均価格の半値をわずかに上回る水準に下落しかねない。

コバルトについては、ウッド・マッケンジーによれば、今年は供給が需要を652トン上回り、来年には供給過剰が2万842トンに拡大する見込み。これにより、平均価格は19年に1トン=6万2502ドルと、今年の予想価格と比較して23%値下がりすると予想される。22年までに平均4万4585ドルになるとみられている。
2018年7月9日 9:57 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-09/PBKOTT6TTDS001