プロ・ハイアマチュア向けデジタルカメラ市場で圧倒的な存在感を示してきたキヤノンとニコン。これまで両社の一眼レフが圧倒的だった市場で、ソニーがミラーレスカメラを引っさげて存在感を増している。

カメラ市場が減速する中で、ミラーレスは成長している。2017年の一眼レフの世界出荷台数は740万台(前年比マイナス13%)の一方、ミラーレスは414万台(前年比プラス18.6%)だった。ミラーレスにおけるソニーのシェアは高く、2017年の台数ベースで42%に及んでいる(いずれもテクノ・システム・リサーチ調べ)。

信号処理に時間がかかるのが難点だったが
2008年にミラーレスが登場した当初、「性能は一眼レフほどではないが小型軽量で持ち運びやすい」という点がセールスポイントだった。

一眼レフは、レンズから取り込んだ被写体の像を鏡で反射させてファインダーで覗くため、実際の撮影対象の状態との間にタイムラグがない。一方ミラーレスでは、レンズから取り込んだ光を電気信号に変換して液晶画面で確認する。こうした信号処理に時間がかかり、撮影者が見ているものと被写体の実際の状態との間に時間差があった。

プロの撮影現場では”一瞬の瞬間”を切り取る必要があるため、ミラーレスが登場しても、しばらくは一眼レフメーカーであるキヤノンやニコンの牙城は崩れなかった。しかし状況は徐々に変わりつつある。

目立つのがソニーの躍進だ。プロ市場におけるシェアは明らかではないが、ソニーの岩槻豊統括課長は「かつてシェアは1ケタだったが、それよりはかなり成長した」と表現する。実際、ここ2年間で、プロ向けサポートの会員数は5倍になったという。

ソニーの製品ラインナップを見ても、プロやハイアマチュア向けを狙っているのがわかる。

現在のソニー製カメラで一番高価な製品は、2017年5月に発売した「α9」だが、同製品はボディだけで49万8880円かかる。キヤノンのフラッグシップモデルが67万8000円、ニコンが69万5000円なのと比べるとまだ安価だが、大のカメラ好きでなければおいそれとは出せない金額だ(いずれも各社オンラインショップ価格)。

ミラーレスで唯一の「フルサイズ」
ソニーの強みについて、岩附統括課長は「イメージセンサーを含む基幹デバイスを内製しているため、ユニークな商品性を提示できる」と話す。

イメージセンサーとはレンズから取り込んだ光を電気信号に変換する半導体で、ソニーはカメラ向けに加えスマートフォン向けでも高シェアを保っている。イメージセンサーの設計はカメラメーカー各社で行っているものの、製造まで完全に内製しているのはソニーとキヤノンのみだ。

イメージセンサーは大きくなるほど光をより多く取り込み、きれいな写真を撮影できる。プロやハイアマチュアは大きなセンサーサイズのカメラを使用しており、センサーが大きくなるほど高級品になる。

一眼レフのフラッグシップモデルと同様の「フルサイズ」と呼ばれる大型のセンサーサイズを使用したミラーレスを製造しているのは、現在ソニーだけだ。2015年にはソニーのミラーレスのうち、フルサイズセンサーの製品は25万台出荷されていたが、2017年には46.5万台まで拡大した(テクノ・システム・リサーチ調べ)。

画質だけではない。α9で搭載したイメージセンサーは、世界で初めて積層構造を採用した。回路部分と画素領域を別の層として重ねることで、高速で信号処理を行う回路を拡張できた。こうした努力によって、光を信号に変えて読み出すスピードが従来モデルに比べて20倍以上高速化した。その他にも画像処理エンジンなどの改良を行うことで、「α9は肉眼で見たように撮影できるレベルに到達した」(広報)。

信号処理の遅さというミラーレスの弱みを克服するメドが立ったわけだ。しかも、ミラーレスは構造上、一眼レフよりも連写性能を向上させやすく、一眼レフを超える連写速度を持つ製品もある。小型軽量で、価格の割にスペックが高いミラーレスを出すことによって、プロからの支持が増えているのだ。

プロにとって、カメラそのものの性能に加え、自身のカメラが壊れたときの代替品貸し出しなどのサービスも重要になる。ソニーは2014年からこうしたプロサポートを始め、現在日本では5箇所あるソニーストア(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡)、世界では22カ国でサポートが行われている。プロサポートを担当するソニーマーケティングジャパンの北村勝司シニアマーケティングマネージャーは、「全世界でのサポートを順次増やしていく」と話す。

「カメラといえばソニー」を目指す
2018年07月08日
https://toyokeizai.net/articles/-/228355