カドカワ傘下のドワンゴは動画サイト「niconico(ニコニコ)」の新バージョン「(く)」(読み方はクレッシェンド)を28日に開始した。ここ2年ほど、安定性や画質の改善を求める利用者の声が多く、競合の動画配信サービスも多数登場したことからユーザー離れが目立っていた。新バージョンで配信システムを強化し巻き返しを狙う。

 新バージョンでは、動画変換のシステムをソフトウエア処理からハードウエア処理を組み合わせたものに切り替えることで処理能力を高めた。これにより、従来は一部に限られていた生放送の高画質配信を、枠数制限なしで同時配信できるようにした。

 Webページの項目を見やすく改変したほか、スマートフォン(スマホ)用の動画投稿ページを加えることで、場所を問わず配信できるようにした。

 今後は配信用の通信回線を毎秒730ギガ(ギガは10億)ビットから毎秒1400ギガビットに増強するほか、ログインせずに生放送を視聴できるようにする。夏にかけて仮想空間で3Dキャラクターを動かすバーチャルユーチューバーに有料のギフトを贈る「投げ銭」システムを導入する。

 当初の新バージョンの開始時期は2017年10月で、その後は18年2月に変更するなど延期を繰り返していた。目新しい機能よりも、安定性に向けた改善に軸足を移すことでユーザーの信頼回復を目指す。(松元英樹)
2018/6/28 13:48
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32343130Y8A620C1X30000/