【上海=大西綾】アジア最大の携帯・通信機器の見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)上海」が27日開幕した。中国の華為技術(ファーウェイ)は2019年半ばにも次世代通信規格「5G」に対応したスマートフォン(スマホ)を発売する方針を明らかした。ハイテク摩擦に直面する米国は諦め、実績のある欧州から市場開拓する方針とみられる。

 「5Gに対応したスマホを来年半ばにも販売する」。MWC上海で講演したファーウェイの徐直軍・輪番最高経営責任者(CEO)兼取締役副会長はこう語った。新端末の詳細は明らかにしなかったが、機能を強化しているVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術が載る可能性がある。

 ファーウェイは米通信大手AT&Tと契約が破棄になるなど、依然として米国でスマホを販売できない。だが、欧州やアフリカ、日本を含む世界シェアでは韓国サムスン電子や米アップルとの差を縮めており、5Gでも同じシナリオを描くとみられる。

 MWC上海ではスマホだけでなく、5Gの本丸と言える基地局などの通信インフラ機器や用途開発でも中国勢の活発な動きがみられた。

 開幕に先立って開かれたイベントでは通信大手、中国聯合網絡通信集団(チャイナユニコム)の邵広禄・副総経理が「遼寧省瀋陽市など16都市で5Gの実証実験を進めている。教育や自動車の分野で新たなサービスを開発中だ」と強調した。

 5Gはすでに標準仕様が統一され、商業化では異業種との提携が焦点の一つになっている。中国工業情報化省の聞庫氏は「世界的な企業と新しい協力関係を確立することが重要だ」と述べ、政府として海外企業との提携を後押しする考えだ。

 27日に新たに明らかになった案件はないが、ファーウェイはこうした海外との取り組みでも中国勢の先頭を行く。

 独通信大手ドイツテレコムと5G基地局の運用実験を進めており、19年に商用化する計画だ。日本ではソフトバンクと提携し、5Gの実証実験を進めている。

 ファーウェイは17年、欧州での特許出願数で首位に立った。無線技術などの発明が多く、世界の通信関連企業は5Gに強みを持つファーウェイと提携に動く。特に欧州通信大手は通信用電波の枠の取得自体に多額の投資が必要で、5Gの技術開発でファーウェイに頼らざるを得ない事情もある。
2018/6/27 22:59
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32326830X20C18A6TJ2000/