【ニューヨーク=中山修志】米ゼネラル・エレクトリック(GE)は25日、工場の自家発電設備などに使われる産業用ガスエンジン事業を投資会社に売却すると発表した。同社は業績立て直しに向けて非中核事業の売却を進めている。製造業の巨人による事業リストラが、関連業界の再編の呼び水となる可能性もある。

 米投資会社のアベント・インターナショナルに32億5000万ドル(約3500億円)で売却する。米メディアによると、買収には米エンジン大手のカミンズも手を上げていたが、価格面で折り合わなかったとみられる。

 GEの産業用エンジンは電力や航空、オイル・ガスなどを含む7つの主要事業に含まれていない。2017年12月期の売上高は13億ドル(約1400億円)と主力の航空機エンジンなどに比べて規模が小さく、フラナリー最高経営責任者(CEO)の事業構想から外れた。

 GEは過去に手掛けた金融事業で損失が膨らみ、2017年10〜12月期に約1兆円の最終赤字に転落した。18年1〜3月期も住宅ローン事業での追加損失により赤字決算となった。

 昨年11月に就任したフラナリーCEOは業績立て直しに向け、18年度に200億ドル規模の事業売却に取り組むと表明。電力、航空機エンジン、医療機器の3事業を中核と位置づけ、その他の事業は大幅に整理・縮小する方針を打ち出した。これまでにヘルスケア事業の一部売却や、鉄道車両エンジンなどの輸送事業の外部専業メーカーとの経営統合を決めた。

 1980〜90年代に約20年にわたってGEを率いたジャック・ウェルチ氏は「選択と集中」を掲げて金融やメディアに事業領域を広げた。だが、その後の金融危機で経営環境が悪化。金融事業からは撤退したものの、いまだに関連損失が続き経営の重荷になっている。屋台骨を支えてきた電力事業も再生可能エネルギーの台頭により低迷している。

 GEは25日を最後に、100年以上続けたダウ工業株30種平均の銘柄から外れた。業績悪化により株価は1年前の半分以下に下落。時価総額では約1130億ドルと競合する独シーメンス(約840億ドル)に迫られている。

 フラナリーCEOは18年度をリストラの年と割り切り、事業売却とコスト削減に集中する方針。1〜3月に8億ドルのコスト削減を実施し、「年間目標額の20億ドル上回る見通し」(フラナリーCEO)という。肥大化した組織をスリム化し、負の遺産を一掃して反転をめざす。
2018/6/26 3:12
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32231990W8A620C1000000/