オンラインゲームなどのやり過ぎで、生活や健康に深刻な影響が生じる「ゲーム障害」(ゲーム依存症)が精神疾患に位置付けられた。

 実態の把握と治療法の開発が進むことを期待したい。

 世界保健機関(WHO)が、病気の名称と症状、分類を示す国際疾病分類を28年ぶりに改訂し、依存的行動による障害の一つとしてゲーム障害を盛り込んだ。2022年1月に発効する見通しだ。

 ゲームに興じる時間や頻度を制御できない。日常の活動よりも、ゲームを優先してしまう。ゲーム中心の生活が1年以上にわたる。これらに当てはまると、ゲーム依存症の可能性があるという。

 ゲームで遊ぶ時間が長くても、やめるべき時に打ち切れるなど、行動を制御できていれば、必ずしも依存症とは限らない。依存症の割合について、WHOはゲームをする人の2〜3%程度と推定しているが、楽観はできまい。

 厚生労働省の研究班は、SNSなどを過度に使っているネット依存者のうち、一定の割合がゲーム依存症だとみている。特に中高生では、52万人と推計されるネット依存者の大半がゲーム依存症にもなっていると分析する。

 競馬などのギャンブルや酒とは異なり、未成年に依存症の割合が高いのは、憂慮すべき状況だ。

 ゲームに熱中し過ぎて、不登校になることがある。引きこもりになった後、ネットゲーム漬けになり、食事さえ取らなくなるケースも少なくない。依存症に至る経過や、表れる悪影響は様々だ。

 正視に耐えない過激な描写に走った戦闘ゲームなどが人気を集めている。そこでは殺伐とした言葉が交わされている。

 勉強に励み、健全な対人関係を築くなど、人生の基礎作りをする大切な時期に、ゲーム依存症になってしまう。青少年にとって大きな損失である。うつ病などのリスクも高まるとされる。

 依存症の治療は、カウンセリングが中心だが、国内で相談に対応できる医療機関は25か所程度だ。専門医も不足している。治療体制の整備は大きな課題である。

 依存症に関連する脳内の物質の作用を詳しく調べ、より効果的な治療法を開発することも必要だ。ギャンブル依存症の治療と共通する部分もあるだろう。

 パソコンやスマートフォンなど、ゲームに触れるきっかけは至る所にある。子供たちが依存症に陥らないよう、周りの大人が目配りして、予兆を捉えたい。

2018年06月24日 06時00分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20180623-OYT1T50180.html