A消費税が導入されたのは1989年度のことだ。

この年の税収は54.9兆円だった。2016年度の税収55.5兆円とほぼ同額なのである。

税収の構造を見ると、1989年度は

所得税21.4兆円
法人税19.0兆円
消費税 3.3兆円  だった。

これが2016年度には、

所得税17.6兆円
法人税10.3兆円
消費税17.2兆円  になった。

この27年間に何が起きたのかと言うと、

所得税が4兆円、法人税が9兆円減って、

消費税が14兆円増えたのだ。税収全体の金額は変わらずに、税の構造だけが変わったのが。

この姿のどこに、「消費税増税で社会保障拡充」があると言うのか。

法人税を激減させ、所得税を減免するために、消費税大増税が強行されてきただけに過ぎない。


1985年に「売上税」という税の導入が企てられた。中曽根政権の時代である。

しかし、この目論見は失敗に終わった。

このときの税制改正は所得税と法人税を減税して、売上税を導入するというものだった。

この政府提案について、「政策構想フォーラム」という学者グループが、その影響試算を行った。

所得階層別に増減税の影響を試算した。

試算結果は、中間所得者層以下の国民は「差し引き増税」になるというものだった。

この試算結果が発表されて、売上税構想は敗北したのである。この影響試算のリーダーを務めたのが大阪大学の本間正明教授だった。

私は当時大蔵省で、この税制改革が日本経済にどのような影響を与えるのかを分析する「マクロ影響試算」を担当した。

マクロ計量モデルを作り、税制改正の経済効果の政府試算を担当したのである。

その際に、上司から与えられた指示は、「税制改革をしたときに消費、投資、成長がプラスになる試算を行え」というものだった。

純粋に分析をして、試算結果を示すのではなく、政府に都合のよい試算結果を出すことがはじめから義務付けられていたのである。

因みに、この政府試算発表を統括した部局は大蔵省大臣官房調査企画課で、担当企画官がいまの日銀総裁の黒田東彦氏だった。

私は直属の上司や黒田企画官から指示を受けて政府試算を行ったのである。