13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言は以下の通り。



 ――インフレと財政政策の見方ついて3月以降何か変化したか。

 「とくに3月以降に大きな変化はない。インフレは2%に向かってゆっくりと上昇しており、FOMCメンバーは引き続き、インフレ目標水準を2%に設定し、それが安定して維持できるまでは勝利宣言はできない。財政政策について、メンバーは企業と個人の減税の効果と消費拡大が今後3年間ほどの間に需要を強く支えるとみている。供給サイドについては法人税減税と投資拡大で生産性が向上し、経済拡大に貢献するとみている。ただ、それがいつ訪れるかのタイミングは不透明だ」

 ――フェデラルファンド(FF)金利が中立水準になったらどうするのか。

 「完全雇用と物価安定を目指して長期間にわたり、緩和的金融政策を実施してきたが、景気が拡大するのに伴い、ゆっくりと金利を引き上げる政策に変わった。今後どれだけ緩和的金融政策を維持するべきか、政策を中立にするタイミングをどうやって把握するかという問いに答えるためには、これから発表される物価指標などの経済指標を精査することだ」

 ――インフレ目標2%は過去2年半にわたり続いてきた。今後は新たな物価目標の設定や新しい目標の設定はありえるのか。

 「個人消費支出(PCE)インフレの目標を2%に設定してきたが、この目標はうまく景気拡大に作用してきたと思う。私を含めFOMCメンバーはこの目標維持に全力を投じてきた。この目標を変えるのは極めて困難といえる。物価が目標を上回ったり、下回ったりすることはありうるわけで、重要なのはこの2%の目標の信頼性を高めることだ。新しい目標の設定については今後我々も議論することはあると思うが、とくに具体的にいつ議論するかという計画はない」

 ――カナダで実施されたG7では緊張が高まり、対中国貿易については追加的な輸入制限導入や各国による米国への報復措置の可能性が高まった。こうした貿易摩擦は米経済にどれだけ打撃を与えるか。通商問題について米企業からの反応は。

 「議会がFOMCに課している役割は完全雇用と物価の安定だ。そして他の政府機関とともに金融の安定を維持することだ。通商問題は政策執行機関である大統領に権限があり、私がそれに意見をするのは控えたい。もちろん私を含め、地区連銀総裁は広く米企業経営者と接触している。それは米地区連銀経済報告(ベージュブック)でリポートしているほか、FOMCでも個々人が通商問題の変化で企業経営者が懸念を高めていることに言及している」

 「また、企業が投資や新規雇用を中断しているという報告も出始めている。景気は強く、今のところそうした事実は数字には表れていない。通商問題はあくまで現時点ではリスクというところにとどめたい」

 ――ホワイトハウスが予測するところの3%成長を達成できるとみているのか。

 「景気の潜在的成長率については見方が様々で不透明要素が多い。一方で財政政策では何千という出来事やデータが関係するということはない。我々のアプローチの仕方は税制改革などからどれだけの潜在成長率がもたらされるかの効果を把握することだ。成長率予測の数値については、それぞれのFOMCメンバーの予測が異なり、それを注視していく」

 ――インフレで勝利宣言はまだできないと言ったが、インフレが目標の2%をどの程度、どの期間上回ったら、どう考えるのか。

 「声明文でも言及したようにインフレが目標を上回っても、下回ってもそれが長期にわたる場合、それは懸念すべきことになる。もちろん物価が上がったり下がったりするのは自然だ。例えばこの夏は原油価格の上昇で物価は2%を上回るだろう。しかし、長期にわたって目標を上回るようなことになれば、我々はインフレ引き下げに動く必要がある。しかし、我々が物価を目標水準通りに正確にコントロールできないことも承知している」

>>2 へ続く(主に労働問題について)

2018/6/14 7:56
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31742660U8A610C1000000/