2018/6/26付
(経済教室)外国人労働どう向き合う(下)「量」偏重の政策・意識転換を
「選ばれ続ける国」へ正念場 丹野清人・首都大学東京教授
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3219436025062018KE8000/
外国人労働どう向き合う(下) 「量」偏重の政策・意識転換を 丹野清人 首都大学東京教授
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO32194360V20C18A6KE8000/
ポイント
○新在留資格で50万人確保でも労働力不足
○大量の外国人獲得・帰国の仕組みは限界
○途上国の発展で出身国に戻る移民が増加

 政府は経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で外国人材の活用を掲げ、建設・造船・宿泊・介護・農業の5つの業種で
「新たな在留資格」を設ける方針を明らかにした。
 新たな在留資格は「特定技能」と名付けられ、技能実習生が移行することを基本形として想定されているようだ。
家族帯同の自由はないが、5年間日本で就労できるようになる。技能実習生の5年と通算すれば、合計10年間働き続けることになる。
制度創設で2025年までに50万人超の労働者を確保することを見込んでいる。家族帯同を可能とするための在留資格上の措置についても
検討するという。…

…すなわち最近は1年間で外国人労働者は約20万人増えている。
 しかも新たに必要とされる外国人労働者は年々増えている。新しい在留資格の創設で50万人が確保されたとしても対象は5つの業種に
限られるので、ほかの職種のことも考えれば実に心もとない。
 さらに言えば、一方で毎年帰国する人が大量におり、その差し引きで考える必要がある。15年の1年間に新たな労働市場に参入した
外国人は39万人にのぼる。つまり日本経済は既に、年間約40万人の外国人の参入を確保しないと回らないところまで来ている。
この現実を踏まえると、新たな在留資格を創設するだけでは済まないだろう。しかも50万人は実際に10年目まで働く人が出てきたときに
達成される数字なので、すぐに確保されるわけではない。
 もちろん「単純労働者は受け入れない」としてきた政府方針からすれば、外国人労働者受け入れへと大きくかじを切ったようにもみえる。
「移民の受け入れ」ではないことに十分に配慮しているというが、10年の滞在期間を公けにし、さらに将来は家族帯同に移行する人も
出てくることを考えれば、移民受け入れの扉を開けたとみることもできる。…

 年間40万人の外国人労働者の受け入れという規模は、世界的にみてトップ5に入る。この規模での参入が続くには外国人労働者から
日本が選ばれ続けなくてはならない。そして選ばれ続けるには、移民化してくれる人がいるなら、それを積極的に評価する意識への
転換が必要になるだろう。