政府は12日、2018年版の科学技術白書を閣議決定した。研究の質を示す被引用件数の多い学術論文数が、国別順位で10年前の4位から9位に下がるなど、イノベーションを生み出す基盤的な力が急激に弱まっていると指摘。次代を担う若手研究者の確保は困難とし、国際的な研究成果を出し続けるには危機感を持って様々な改革をすることが不可欠とした。

今回の白書では、イノベーションの源泉となる国の科学技術力の現状を分析することに焦点を当てた。学術論文数や研究開発投資などあらゆる指標が欧米や中国に比べて見劣りしている。打開に向けて抜本的な対策を打てていないことも浮かび上がっている。

2013〜15年の学術論文は、被引用件数が上位10%の論文数が9位と、米中だけではなくカナダやオーストラリアにも抜かれた。10年前は米英独に次ぐ4番手だったが、急激に順位を落としている。

研究者の雇用待遇は任期付きなど不安定なことから若手に敬遠されている。研究者として一人前に認められる大学院博士課程への入学者数は03年度の1.8万人をピークに減少が止まらず、16年度は1.5万人まで減った。若年人口の減少傾向が続く日本では研究者の確保はさらに困難になるとした。

また、研究者の人脈を広げるため海外へ渡航する研究者は件数も2000年度のピーク時から15年度は約半分の4400人に減った。政府の研究開発投資は伸びる兆しはなく、日本の相対的地位の低下傾向はしばらく続きそうだ。
2018/6/12 9:35
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31642700S8A610C1EAF000/