米IT大手、アップルが社会問題になりつつあるスマートフォン依存の対策に乗り出すことが、1日までに分かった。4日に開幕する同社のイベント「年次開発者会議(WWDC)」で、スマホ「iPhone(アイフォーン)」依存を防ぐ効果があるソフトウエアを発表する。大株主からスマホの過度な使用が心身に悪影響を及ぼすと指摘されており、アップルはこうした批判に対応した。

従来方針から転換

WWDCでは来年のソフトウエア戦略を説明するほか、将来のハードウエア計画の一部を明らかにする予定だ。同社はこれまでアイフォーンやタブレット端末「iPad(アイパッド)」、パソコン(PC)「Mac(マック)」、「アップルウオッチ」、「アップルTV」に搭載される基本ソフト(OS)を更新する際、ユーザーと端末の関係をより緊密にさせ、最新のアプリやゲームに没頭させるような機能向上をアピールすることに努めていた。

しかし、今年は端末の利用を減らすための機能をウリにする方針にシフトする。アップルの技術者は、ユーザーが端末や特定のアプリの利用時間を把握できる一連のツール「デジタル・ヘルス」計画に取り組んでいる。

関係者によると、こうした機能はアップルの次期モバイルOSになるとみられる「iOS12」に搭載し、「設定」内のメニューに追加されるという。

アイフォーンなどの開発に関わった同社の元幹部、トニー・ファデル氏は「ユーザーがどれだけデジタル活動に時間を費やしているのかを知るツールやデータが必要だ」と提言していた。ただ、同氏はアイフォーンについて「食べ物を保管する冷蔵庫のようなもので、それ自体に依存性があるわけではないということを理解する必要がある」と指摘している。

追い風の可能性も

アップルの大株主であるジャナ・パートナーズやカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)は今年1月、同社の端末の依存性について批判、アップルに対策を講じるよう求めていた。

こうした要望を受け、アップルは製品の利用管理対策の一環として、親がアクセスを制限できる機能「ペアレンタル・コントロール」を強化すると表明していた。

もっとも、スマホ依存への懸念の高まりはアップルにとって追い風となる可能性もある。アップルはハードウエアの販売で利益の大半を稼いでおり、「デジタル・ヘルス」のソフト更新は、ユーザーが同社の新製品を買い続ける新たな理由になる公算が大きいためだ。

同業のグーグルも5月の開発者会議で、アンドロイド端末向けに依存を防ぐためのツールを発表していた。同社はユーザーにアプリを使用した時間を知らせ、休憩を促す「ダッシュボード」と呼ばれる新機能を紹介した。(ブルームバーグ Mark Gurman)
2018.6.2 06:13
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180602/mcb1806020500002-n1.htm