現行の米景気拡大局面で、物価と賃金がいずれも伸び悩む事態にエコノミストは頭を抱えてきた。
そして今、インフレが加速に向かう一方で賃金の伸びは小幅にとどまるという、
新たな難題に直面しかねない状況にある。

  コカ・コーラ・ビバレッジズ・フロリダのトロイ・テーラー最高経営責任者(CEO)は先週、
ダラス連銀が開いた会議で、
「少なくともわれわれのビジネスでは、広範な賃金上昇を目にすることはなさそうだ」と指摘。
一部の熟練労働者にしっかり支払うケースを除けば、
生産面の必要に対処する上で同社はテクノロジーへの依存を深めるだろうと語った。

  テーラー氏はさらに、
「企業が価格設定力を強める中で、
賃上げの恩恵を受けることができない人口層はどうなってしまうのだろうか」と問い掛けた。

  これは米金融当局にとって重要な問題であり、
インフレ率が2%の当局目標に達してもなお緩やかな利上げペースを維持している理由の1つだ。
失業率は17年ぶりの低水準にあるが、新技術や労働市場に根強く残るスラック(たるみ)、
将来的な設備投資の回復など、何らかの変化によって、
低失業率が賃金上昇につながるのを構造的に妨げることになれば、
経済の輪郭は全く異なったものとなる可能性がある。

  賃金の持続的な上昇がなければ、
需要に基づく価格上昇を支えるのに必要な力強い支出を喚起するのが難しくなる恐れがある。
また、引く手あまたの熟練労働者だけに賃上げが限られれば、
資金的に余裕のある労働者の懐がますます潤って経済成長を後押しする一方、
スキルや経験に乏しい労働者が一段と取り残されるという、
極端な二速経済の下での政策運営に当局が臨む事態も考えられる。

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Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-30/P9J3YR6K50XS01