東洋経済 ONLINE 2018年05月21日
https://toyokeizai.net/articles/-/221561

 株式投資の中級者くらいになると知っている人も多いのだが、俗に「信用残は個人投資家の、
裁定買い残は外国人投資家のエネルギーを表す」と言われる。


「裁定買い残の増加」をどうとらえればいいのか

 どういうことだろうか。簡単に説明しよう。まず信用残は現金や株券などを担保に証券会社などから
融資を受け取引した売買残高だ。これは売り残・買い残とも停滞気味であり、個人投資家の動きは
鈍いといえそうだ。

 一方、裁定買い残は裁定取引において、先物売り、現物買いのポジションを組んで、まだ取引を
解消していない現物買いの残高のことを指す。現在、この裁定買い残のエネルギーが高まっている。
株数ベースで10億株に乗せた5月2日の日経平均株価の引け値は2万2472円だったが、買い残がじりじり
積み上がるに従って、株価上昇が顕著になって来た。

 株価が上昇したから積み上がったとも言えるが、外国人投資家の積極的姿勢が株価を上昇させているのも
また事実だろう。

 裁定買い残の増加は将来の売り圧力にもなるが、裁定買い残が低いレベルから10億株を超えて来る時には、
相場が上昇への転機を迎えることも少なくない。

 例えば昨年の9月が良い例だ。同9月15日に、低迷していた裁定買い残が10億株を超えた時、日経平均は
1万9909円だった。その後、2018年になって14億4000万株まで積み上がり、2月2日に再び10億株を
割れるまでの推移の中で、日経平均は現時点での今年の高値2万4129円(取引時間中)を1月23日に記録した。
今回、直近5月16日時点での買い残(日本取引所グループのHP)は11億8292万株。まだこれからという数字だ。

 もうひとつ、テクニカル面でも見て見よう。テクニカル指標はたくさんあるが、一般の個人投資家が
使うものとしては、やはり移動平均線だろう。移動平均は一定期間に行動した投資家の投資コストなので、
投資家にとって最も実感のある数字だからだ。

 株価が買い値よりも高ければ投資家の気持ちは良いし、安ければ不愉快だ。つまり平均線と時価の関係が
投資家の「センチメント」(心理)となり、そしてその移動平均の方向(上向きか下向きか)が
市場の方向を表すことが多い。投資家が基準とする移動平均線には25日(短期)、75日(中期)、
200日(長期)が多く、それに超短期の5日移動平均の絡む姿で判断するスタイルが一般的だ。

 現在、日経平均の25日、200日移動平均線は上向きで、上値指向の市場環境になっている。だが75日だけが
まだ下向きだ。これこそが「相場は強い感じがあるが、一気に行きそうで行かない」現状を表している。

 この75日移動平均がこのまま行くと5月28日あたりからいよいよ上向く。実は筆者の強気観の一つが
同29日から劇的に上向く75日移動平均線だった。なぜなら5月29日の75日前は2月7日、つまり2月6日の
マイナス1071円が計算範囲から外れるからだ。単純な計算だが、マーケットのセンチメントが一瞬にして
変わるのは、意外に単純な理由による。しかしその1071円安を含む75日間の平均でも上向きになるということは、
筆者が考えている以上の相場の強さが現れて来たということだ。


(続きは記事元参照。全2ページ)