高校生の「志願したい大学ランキング」(リクルート進学総研調べ)で関東のトップを走ってきた明治大学(東京・千代田)。2017年に首位の座を早稲田大学に譲るなど、ライバルの急追を受けている。少子化の進行や国による東京一極集中是正策の導入などで経営環境も厳しさを増す一方だ。ただ、2016年に就任した柳谷孝理事長(66)は意気盛んだという。その理由を聞こうと神田駿河台にあるキャンパスを訪ねた。

■女子学生の比率が増加
 「一昔前に比べれば、志願者数は大きく伸びました。課題だった女子学生の比率も35%にまで増えています。これまでとってきた経営戦略が正しかったといえるでしょう。しかし、これは大きな成功へのホップにすぎないんです。さらに高い目標に向かって、ステップ、ジャンプしていきます」。明治のスクールカラーである紫紺のネクタイを締めた柳谷氏は、こう話す。柔和な表情で時折冗談も交えて話す柳谷氏は、野村証券で15年間役員を務めた経験の持ち主で、大学の経営改革を主導する。

 かつてはバンカラなイメージの強かった明治が、「おしゃれな都市型大学に変身を遂げつつあるのでは」と高校生らに注目され始めたのは2010年前後。04年に志願者数が7万人台にまで落ち込み危機感を抱いた大学側が、時代の先端を行く研究施設をつくったり、予算を大幅に増やして国際化に取り組んだりするなど様々な改革を推進。その結果、外部の評価が高まり、07年には志願者数が10万人の大台に乗った。


めざすは「MARCH」卒業?
 さらには、英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」の世界の大学ランキングで、アジアの大学トップ100入りを目指す。現在、日本の私立大では早大も慶応大学もトップ100には入っていない。もし明治がランクインすれば、世界的には両校を上回る評価ということになる。明治の関係者が密かに期待する、早・慶・上智大学に次ぐ首都圏の私立大学グループ「MARCH」からの卒業と「早慶明ビッグスリー体制」が見えてくるかもしれない。

 大きな課題は、今後ますます厳しくなる大学の経営環境だ。少子化に加え、政府は18年度から、人口の東京一極集中への歯止めの一環として、東京23区の私立大学の定員増や学部の新設を凍結した。一方で私立大が一部の学部を他大学に譲渡できるようにする法制度の導入を検討するなど、規制緩和も同時に進みそうだ。
 柳谷氏は「大学の再編、淘汰が進む中、経営上の選択肢は多いに越したことはない。文科省が検討している学部限定のM&A(合併・買収)が可能になれば、もちろん重要な選択肢の一つとしてとらえていきたい」と自信をのぞかせる。野村時代に投資銀行業務の責任者として数々のM&Aを手掛けてきた同氏にとっては、ホームグラウンドでの試合といえるかもしれない。

 明治大学の運営は、学校法人明治大学の理事長である柳谷氏と、明治大学の学長である土屋恵一郎氏による「二長制」を敷いている。土屋氏は教育・研究、柳谷氏は経営という役割分担だ。これに対し、一人が経営、教育・研究の両方を見る一長制は、意思決定は早いがチェック機能が働かずに間違った方向に進むリスクも高いと柳谷氏は指摘する。
 第2期中期計画の最終年にあたる21年に創立140周年を迎える明治。その時にどれだけブランド力が高まっているかは、柳谷氏が「非常に改革熱心でアイデアが豊富」と信頼を寄せる土屋学長との「二長」の手腕にかかっている。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180507-00000006-nikkeisty-bus_all