米アマゾン・ドット・コムが日本でクラウドサービスを充実させる。初級技術者でもインターネット経由で人工知能(AI)を活用した分析モデルを手軽に作成できる新サービスを年内に日本で本格展開する。国内クラウド市場は2018年度に2兆円を突破するなど今後も成長が続く見通しだが、競争も激しくなっている。アマゾンはサービスの改善を重ね、シェア首位の座を堅持する。

アマゾン子会社で、クラウドサービスを手掛けるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)でAIを統括するスワミ・シヴァスブラマニアン氏が日本経済新聞の取材に答えた。同氏はAWSが米国で展開するAI関連サービス「セージメーカー」について「大手企業やスタートアップから使いたいというニーズがあり、年内には日本で始めたい」と述べた。日本国内のデータセンターを活用する。

セージメーカーはAIを活用した分析モデルをネット上で簡単に作成できるサービスだ。AWSがあらかじめ準備したアルゴリズムを使って機械学習を重ね、アプリケーションとして分析モデルを利用できるようにする。「AWSのどのサービスよりも伸び率が高い」(シヴァスブラマニアン氏)として、日本での事業を本格展開する。

通常、AI分析モデルを作るには必要なデータを整理するなど手間がかかっていたが、セージメーカーを使えば、機械学習に精通していない技術者でもAIを手軽に利用できる。

これまで日本国内の技術者がセージメーカーを利用するには、海外のデータセンターを経由する必要があった。日本企業には安全を確保したいという心理から、国内にデータを置いておきたいというニーズがある。AWSは日本国内のデータセンターを使うことでこうした課題をクリアできるようにする。

MM総研によると、国内のクラウド市場は16年度に1兆4003億円。18年度は2兆1289億円、20年度には3兆2063億円と急拡大する見込みだ。単にクラウド事業者のデータセンターにデータを保存する従来の使い方だけでなく、セージメーカーのようにクラウド上で提供するサービスの利用も拡大する見通しだ。

一方、米マイクロソフトや米IBMといった競合もクラウドサービスを強化している。AWSは「18年も1000を超える機能追加やサービス改良を実施する」(シヴァスブラマニアン氏)などして、競合を引き離す考えだ。(企業報道部 杜師康佑)
2018/4/24 6:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29726820T20C18A4X30000/