日本の輸出相手として中国の存在感が強まっている。2017年度の輸出額は中国向けが過去最高を更新し、米国向けを6年ぶりに逆転した。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの需要拡大を受け、半導体製造装置の輸出がけん引した。米国向けは主力の自動車が伸び悩んで勢いに差が出た。日本の輸出先の構図の変化が浮かび上がった。

https://www.nikkei.com/content/pic/20180418/96958A9F889DE0EBE7E1E3E2E2E2E3EAE2E6E0E2E3EAE2E2E2E2E2E2-DSXBZO4965577017122012000002-PB1-2.jpg
「IoT」などの需要拡大を受け、半導体製造装置の輸出がけん引する

 財務省が18日発表した貿易統計速報(通関ベース)によると、中国向けの輸出額は前の年度と比べて18.3%増の15兆1871億円。半導体製造装置は5割増えた。習近平(シー・ジンピン)指導部の国家戦略「中国製造2025」で産業高度化を掲げる中で「先端投資が拡大している」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)という。大幅な人件費増を背景に省人化投資も活発で、金属加工機械は7割増だ。

 ファナックは中国向けの産業用ロボットや制御装置などの輸出が好調で、1月に前期3度目となる業績見通しの上方修正をした。半導体製造装置メーカーも増産を急いでおり、東京エレクトロン宮城(宮城県大和町)は18年10月までに生産能力を約2倍に増やす計画だ。

 米国向け輸出も15兆1819億円と7.5%増えた。3000cc超の大型車が好調だった自動車が2年ぶりに増加に転じた。ただ、伸び率は5.7%と1桁にとどまり、全体の輸出額でわずかに中国向けが上回った。

 17年度の輸出総額は10.8%増の79兆2219億円。過去最高だったリーマン・ショック前の07年度以来、10年ぶりの大きさだ。この10年前の水準と比較すると、米国向け輸出額が8.5%減ったのに対し、中国向けは16.4%増と、構図が変わってきている。

 中国向けについては、過去も09年度から11年度までの3年間、米国向けを上回っていた。リーマン・ショックで米国経済が落ち込む一方、中国は政府による4兆元の景気対策で需要を底上げしていた時期だ。しかし12年度には経済の減速や沖縄県の尖閣諸島の国有化を巡る摩擦などで伸びず、米国向けが中国向けを追い抜いた。

 再び逆転した17年度は、米中ともに経済が堅調な状態で起きており、日本の輸出で中国の存在感がより大きくなっていることを浮き彫りにしている。SMBC日興証券の丸山義正氏は「中国経済の成長が当面続くだけに、輸出企業は今まで以上に中国のニーズを把握する動きが求められる」と指摘する。

 懸念材料はトランプ米大統領の保護主義に端を発する米中貿易摩擦だ。中国から米国への製品輸出が減ると、輸出製品を作る中国工場の投資意欲が減退しかねない。製造装置やロボットなど日本から中国向けの輸出製品の需要も減る悪循環が起きうる。米国経済も下振れすると、米・中という日本の「輸出2本柱」が揺らぐ危険がある。

 財務省が18日発表した3月の輸出額は2.1%増の7兆3819億円、輸入額は0.6%減の6兆5845億円だった。1〜3月でならして昨年10〜12月と比べると、輸出が伸び悩み、「1〜3月の国内総生産(GDP)の外需の押し上げ効果はほぼゼロ」との見方が多い。

(スレ立て依頼から)
2018/4/18 16:59
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2953100018042018000000/