日中両政府は16日午前、8年ぶりとなる閣僚級のハイレベル経済対話を都内の飯倉公館で開いた。金融やビジネスなど幅広い分野で協力のあり方を議論し、中国の広域経済圏構想「一帯一路」についても意見を交わす。米国の鉄鋼輸入制限などへの対応も議題になるもようだが、日本側は米国との首脳会談を控え、米国を過度に刺激せずに中国との間合いを図る展開となっている。

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会談する河野外相(右手前から2人目)と中国の王毅外相(左手前から3人目)ら(16日午前、東京都港区)=代表撮影

 会議は河野太郎外相と中国の王毅外相が共同議長を務めた。河野氏は冒頭「日中経済関係をさらに強固にしていく契機にしたい」と強調。王氏は「今回の対話が両国関係の改善と発展に前向きな役割を果たすと確信している」と話した。

 対話では中国で関心が高い省エネなど環境対策のほか金融協力、ビジネス環境の改善、サービス業の相互進出を促す方策などを協議。日本政府としては中国で需要が高まるとみられる介護や福祉分野で日本企業を支援する狙いがある。

 日中韓3カ国の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の妥結に向けた協力も確認。5月に予定する日中韓首脳会談を前に、経済での協力関係を訴える狙いだ。

 習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの一帯一路も主要テーマとなる。今後、環境や物流などの分野で第三国での具体的案件を洗い出す。日本は安倍晋三首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」を説明する方針だ。

 世界的な保護主義の流れへの対応についても議題になる見通し。トランプ米政権は日本や中国からの鉄鋼・アルミニウム製品への関税をすでに引き上げ、中国の知的財産侵害を理由に幅広い品目の関税上げも示唆している。こうした保護主義への懸念や、世界貿易機関(WTO)を中心とした多角的貿易体制の重要性で一致する方針だ。

 ただ、米への対応については日中間に温度差がある。中国は米に報復関税も辞さない構えだが、日本は米が日米FTA交渉に向けて圧力を強めることを警戒し強硬措置に慎重だ。

 15日に開かれた世耕弘成経済産業相と鍾山商務相との会談でも、中国側は「貿易戦争を望んでいるわけではないが、取るべき対応は取る」と報復措置を強調。日本側は「報復の応酬は誰の利益にもならない」と述べるにとどめた。

 経済対話は2010年8月に北京で開いて以来、4回目。07年12月に始まり、当初は1〜2年に1度の定期化を想定していた。しかし沖縄県の尖閣諸島を巡る対立で日中関係が冷え込み、中断が続いていた。

 18年は日中平和友好条約締結40周年の節目の年。日本政府関係者によると、王氏の来日に合わせた開催は中国側が求めた。安倍首相が17日から訪米し、トランプ米大統領と会談する前に、対米貿易で日本の理解を得たい思惑がある。日本にとっては、通商政策で中国との協調路線を鮮明にすれば、米政権の反発を受けかねないという難しい立場での対話となった。

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日中財務相が会談 8年ぶりに日中経済対話を開催
 麻生太郎財務相は16日午前、財務省内で中国の劉昆財政相と会談した。劉氏は日中両政府が16日に8年ぶりに開く「日中ハイレベル経済対話」のために来日中。麻生氏と劉氏の会談は今回が初めて。
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HE0_W8A410C1000000/

(スレ立て依頼から)
2018/4/16 11:31
日本経済新聞
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