小売り大手がデジタル戦略を加速している。米アマゾン・コムをはじめ流通小売市場で存在感を強めるインターネット通販事業者への対抗に迫られているからだ。IT企業との連携で技術を取り込み、自社の店舗改革との相乗効果も狙う。

「ITの世界ですごい変化が起きていて、流通業界が大きな波にさらされている。デジタル戦略を経営の中心に持ってこないといけない」。セブン&アイ・ホールディングス(HD)の井阪隆一社長は5日の記者会見で危機感を表明した。

セブン&アイは昨年11月、通販大手アスクルと共同で生鮮宅配サービス「IYフレッシュ」を始動。今年3月にはデジタル戦略推進本部を設けIT投資に本腰を入れる。

念頭にあるのはアマゾンだ。顧客の購買データを収集し分析するITの手法を駆使して新サービスを打ち出し、アマゾンは既存の事業者を淘汰(とうた)してきた。昨年に米高級スーパーのホールフーズ・マーケットを買収し、実店舗の運営を本格化。日本では生鮮食品宅配「アマゾンフレッシュ」を稼働した。

アマゾンや、西友(東京)との提携に踏み切った楽天などのネット通販に対抗する上で、鍵を握るのがIT企業との連携だ。「技術者の育成には時間がかかる」(流通大手システム担当者)ため、企業の合併・買収(M&A)を含めた先端技術の確保が課題となる。

デジタル改革に出遅れたと悔やむイオンの岡田元也社長は、11日の記者会見でも「既存の小売業の間隙をネット通販事業者に突かれた」と反省を口にした。

イオンは2018年2月期のグループ売上高のうち、ネット通販などのデジタル事業は約1%にすぎない。5000億円を投じ20年度には12%に引き上げる構想を掲げる。ソフトバンク、ヤフーの両社とはネット通販事業での協業を検討。他社との連携を深めると同時に店舗改革も進める方針だ。

一方、ユニー・ファミリーマートホールディングスの高柳浩二社長は「アマゾンの怖さもあるが、われわれにも強みがある」と強調。実店舗とネットを連動させたサービスを重視する姿勢だ。
2018.4.16 05:00
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180416/bsd1804160500004-n1.htm