空のステキな旅は「貨物室」で――欧州航空機大手のエアバスは、旅客機の貨物室に組み込める寝台用客室の開発・販売に乗り出す。実際の運航時にどんなサービスに活用されるかは不明だが、同社によると「乗客はより快適に過ごせ、航空会社は差別化を図ることができる」という。豪華さで話題を呼んだ総2階建て機「A380」は苦戦気味。今度はより投資を抑えた設備で航空各社の需要をつかむ。

仏エンジン大手サフランの子会社で航空機部品を手掛ける仏ゾディアック・エアロスペースと共同で開発する。航空機の貨物室で通常の貨物用コンテナと交換して使う。2020年までに同社の中型機「A330」での使用を見込む。試作品が完成しており、航空会社からの反応も上々だという。

 シンガポール航空が2007年に初めて定期運航で導入した「A380」は大型ベッドや豪華な内装から「空飛ぶホテル」と呼ばれる。大都市間を行き来する人が増えるとみて500人以上が搭乗できるよう開発されたが、燃費や搭乗時の効率の悪さから今年1月まで約2年間新規受注のない状態が続いていた。エアバスのリーヒー最高執行責任者(COO)は「エミレーツ航空から追加の注文が無ければ、生産中止を考えざるを得ない」などと発言していた。

 1月に中東最大の航空会社エミレーツ航空から最大36機の受注契約を結んだものの、航空業界の需要は近年燃費のいい中型・小型機に移っており、その傾向は続くとみられる。スペースを確保するため寝室も「豪華ホテル」から「貨物室」に落ち着いた。(千住貞保)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29351600T10C18A4000000/