【ジュネーブ=細川倫太郎】2017年は世界貿易の復調が鮮明になった。世界貿易機関(WTO)は12日、同年のモノの貿易量の伸び率が前年比4.7%と、11年以来6年ぶりの大きさになったと発表した。けん引役はアジアで、個別の国では貿易額で中国が首位を奪還した。WTOは18年も好調が続くと予測するが、米中の貿易摩擦など先行きのリスクは大きくなっている。

 貿易量の伸び率は17年の実質経済成長率(3.0%)を上回った。貿易量の伸びが経済成長率を下回る「スロートレード」は3年ぶりに解消された。

 世界全体のモノの貿易額は輸出が17兆1980億ドル(約1840兆円)、輸入が17兆5720億ドルとそれぞれ約11%増。「旺盛な個人消費や投資が世界貿易の成長エンジン」(WTO)となり、原油など資源価格の上昇も追い風になった。アジアは輸出・輸入ともに2ケタの伸びを記録し、北米や欧州に比べ勢いが際立つ。

 個別の国のモノの貿易額では中国が4兆1050億ドルと米国を上回り、2年ぶりに首位に返り咲いた。中国では半導体製造装置などを輸入し、スマートフォンなど最終製品を製造して輸出する流れが拡大。米国の消費拡大を背景に、電気製品やおもちゃの対米輸出も増加した。

 2位の米国では企業の活発な設備投資を背景に、コンピューターや産業機械など資本財の輸入が大きく増えた。4位の日本では主にアジア向けに、半導体製造装置の輸出が拡大している。

 WTOは18年の貿易量の伸び率を17年比で4.4%と予測する。世界経済の好調を背景に、個人消費や設備投資が拡大し、モノやサービスの輸出入の勢いが続くとみる。大型減税による米国景気の上振れへの期待も大きい。

 ただ、足元の貿易環境は極めて不安定だ。米国は鉄鋼やアルミニウムの関税を引き上げ、中国には知的財産権侵害への対抗措置として機械などの関税引き上げを表明。中国側も報復する方針を示した。米中が貿易戦争に突入すれば、世界景気に深刻な打撃を与える。

 12日に記者会見したWTOのアゼベド事務局長は「足元はとてもポジティブで、貿易の強い成長は、世界景気の拡大や雇用創出につながる」と評価。19年もモノの貿易量の伸び率が4.0%になると見込むが、「好調な予測は貿易制限の影響を考慮しておらず、貿易制限が広がれば好転の動きはすぐに損なわれる」と警鐘を鳴らした。

(スレ立て依頼から)
2018/4/12 22:22
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29335840S8A410C1FF2000/