2018年の「住みたい街ランキング」は、吉祥寺・恵比寿を抜いて横浜が1位に輝き、大きな話題を呼びました。「住みたい街ランキング」を深読みして、自分にとっての「住みたい街」を考えるには? SUUMO編集長の池本洋一さんにじっくりお話を伺いました。

【写真】20代〜40代 年代別「住みたい街ランキング」を分析すると



遠い地域の人も「横浜に住んでみたい」
―― 今年は横浜が1位にランクインしました。どうしてでしょうか?

池本 色々数字を見ながら分析したのですが、実は、20代・30代・40代の全年代で横浜が1位なんです。街によって「池袋は20代に強い」「吉祥寺は40代に人気」という風に、年代差が出てくるものなのですが、横浜は均等なんですね。つまり横浜は、若い層を含めて全体から強く支持されたことになります。

 そして、もうひとつ分かったことがあります。横浜を支持している人たちの住んでいる場所を調べると、52.4%が神奈川県民でした。逆にいうと40%以上の人たちが、神奈川県外の人ということです。

―― 遠い地域の人も、「横浜に住んでみたい」と。

池本 そうなんです。ちなみに、吉祥寺を支持したのは68.9%が東京都民でした。東京都民に限定した「住みたい街ランキング」だと吉祥寺が1位なんですよ。

 じゃあなぜ横浜が遠方からも人気があるのか。1つはやはり、都心部の地価・マンション価格が高騰しているから。「住みたい街ランキング」って、「住みたいかどうか」で単純に回答しているはずなんですけど、過去のランキングの結果を見ても「現実的に住めるところ」を視野に入れて回答する人が多いんです。特に今、「等身大で街を選ぶ」という傾向が強くなっているんです。

―― 等身大、ですか。

“20代吉祥寺離れ”の理由は「シネコンがないから」
池本 例えば恵比寿駅最寄りの新築マンションは、1坪あたり800万円するんですよ。66平米・20坪で800×20だから1億6千万円。とても普通の人には買えないです。賃料も少しずつ上がっていて、都心部の地価・賃料の高騰が非常に顕著になってきている中で、「都心一極集中」がちょっと嫌われている。少し郊外に目が向いているんですね。

 さらに、年代別の総合ランキングを見てもらうと、吉祥寺は20代の若者の人気が低いんですよ。20代のランキングだと6位ですよね。40代では2位なんですよ。なぜ若い人たちからの吉祥寺人気がないのか、ヒアリングを進めていったら、「シネコンが吉祥寺にはないから」という声が割と多かったんです。

―― えっ、シネコンがないと若者票は獲得できないんですか。

池本 シネコンだけでなく、安いアミューズメント施設、長居できるファミレス、広い公園など大勢で長く遊べる場所が意外と少ない。それでおしゃれなお店は多いんだけど、おしゃれなお店は高い(笑)。かつ人がいっぱいいるから長居しづらい。若い人たちからすると、「長時間遊べて居心地のいい場所」というのが吉祥寺にはあんまりないと。

―― なるほど……。

池本 吉祥寺の近くでいうと、立川は真逆なんです。全部揃っています。だからそういう街の人気が、若い人の間でじわじわと高まっていますね。僕は40代だから吉祥寺のほうが好きですけど(笑)。

「おしゃれ系カフェだけじゃなくて、自分たちが日常使いできるような楽しい場所が欲しい」。これが20代の人たちの本音ですよね。「郊外の中核都市」には全部揃っているんです。

―― 「人気上昇中ランキング」に出てくる街は、“郊外中核都市のスタメン”という感じです。

池本 そうそう。立川も海老名も大宮も柏も、全部映画館があるし、レジャー施設がある。若い人たちが安く遊べる場所、かつ交通の要所なんですよね。

 この4都市って、今までは遊びに行く街だったじゃないですか。「立川は遊ぶ場所、住むのは隣の国立でいいじゃん」みたいな話になりそうなものなんですが、今はどちらかというとその利便性を、日常生活の中でも享受したいという人たちが増えている。それが郊外の中核都市の人気を生み出しています。

「働き方改革」の影響で、さらに郊外が見直されている
―― そして「郊外の中核都市」代表格が、横浜ですもんね。

池本 そうなんです。横浜が遠方からも高い人気を集めた2つ目の理由は、ずばり「働き方改革」。さらに郊外が見直されるきっかけになっていると思います。弊社もそうですけど、労働時間が短くなって夜早く帰る人たちが増えているんですよね。確実に3年前とはまるで違う、早い時間帯に帰っていますよ。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180325-00006681-bunshun-life