熱狂のうちに幕を閉じた平昌2018冬季オリンピック。冬季史上最多となる13個のメダルを獲得した日本代表選手団の活躍が、鮮やかに思い出されます。

東京2020オリンピック・パラリンピックまで、いよいよ900日を切りました。2020年、世界は日本の何に驚き、感動し、何を持ち帰るのでしょうか。本当の「おもてなし」とは? 巨大な建造物? 派手な演出? きっと、そうじゃないーー。

経済、文化、スポーツ、教育、テクノロジー。東京2020オリンピック・パラリンピックの組織委員会参与を務める夏野剛・慶応大大学院特別招聘教授に、あらゆる切り口から、TOKYO 2020を語っていただきました。

「わかっちゃいるけど変えられなかった」日本停滞の20年
2020年にオリンピック・パラリンピックが東京に来る意味合いを、我々はもっと認識すべきです。この20年間、これだけテクノロジーが発展したのに、それを社会に「実装」するという意味では日本はかなり遅れている。テクノロジーに応じて社会の仕組みを変えてきていないんです。

例えば法律、ビジネスの慣習、経営のシステム、あるいは教育や社会のあらゆる制度が、新しいテクノロジーが出てきてもっと変わってもいいはずだったのに、ずっと変えないできてしまったのがこの日本の20年なんですね。

結果的に過去20年で日本のGDPはほんの数%しか増えていない。停滞している。経済学的には、テクノロジーが進化すると、生産効率や社会の効率が上がるはずなんです。一人の人がアウトプットできる価値の量や質も上がりますから。
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実は1995年ごろ、日本は一人当たりGDPが世界のトップクラスだったんですよ。それが2016年には先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の35カ国中18位だった。その前年は20位。いずれも先進7カ国中、ダントツ最下位です。

アメリカは過去20年で約2倍にも成長しています。人口は約20%の伸びなのに、経済は倍の規模になっているんです。

日本にとってこの20年というのは、「わかっちゃいるけど変えられない」ということがたくさんあって、その結果、日本は、先進国でも一人当たりの生産性が極めて低い国になってしまったんです。停滞しているといいますが、世界からするとどんどん相対的に落ちてきている。そんな20年だったんですね。

問題は、法律も規制も長年変えていないこと。企業経営のあり方も見直していった方がいい。民間企業の役職なども変えていない。社長、副社長、専務、常務、取締役、執行役員、部長、副部長、課長、担当課長、係長......なんて、もういらないでしょ。一つずつ役職が上がっていくのに30年近くかかってしまう。これらは昭和の時代に作った仕組みです。これだけ新しいテクノロジーが出てきているのに、古い仕組みがそのまま温存されているのはおかしい。

そこにオリンピック・パラリンピックが来る。東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に、やっと、いろんなことを見直そうという機運になっています。海外から見る目を意識し、常に今あるものを見直し、変化や進化の「くせづけ」をしていくべきだと思います。


■2020年以降の深刻な人口減少。テクノロジーで「悪ノリ」し、効率化を

2020年以降、いよいよ人口減少が深刻化してきます。社会全体の効率を上げていかないといけない。そうしないと、今の生活が維持できないということを認識すべきです。
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効率を上げるにはテクノロジーなんです。テクノロジーの社会実装、ソーシャルアダプテーションというんですが、社会がテクノロジーにどう適応していくか。今の生活を維持するために、テクノロジーを使い倒していく。そういう方向に一気にシフトしていかないと、日本は今の生活レベルが維持できない。怖い状況なんです。

このタイミングでTOKYO 2020を迎えるというのは本当に大事なことです。ぜひ、みんな「悪ノリ」してほしいんです。「え、そんなの変えられないよね」ということを変えちゃってほしい。「この機会を逃すともう変えられないぞ」くらいの気持ちで、どんどんやっていかないといけません。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/03/06/2020TOKYO_a_23379196/