交通系ICカード「Suica(スイカ)」などに使われるソニーの非接触IC技術「フェリカ」が、ベトナム南部ホーチミンで建設中の地下鉄で採用されることが2日までに、分かった。ソニーは国内よりも成長余地を残すアジア市場を攻略し、フェリカの海外出荷比率を現在の2倍以上となる4割程度に引き上げる考えだ。

フェリカ搭載の交通系ICカードが乗車券として採用されるのは、ベトナム初の地下鉄として建設が進むホーチミン市都市鉄道。2020年末に、1号線(全長19.7キロ)が開業する計画だ。

政府が進めるインフラ輸出の一つと位置づけ、総事業費2360億円のうち1554億円が日本の円借款でまかなわれる。清水建設や日立製作所が建設などを受注し、乗客の利便性向上のために乗車券についてはフェリカ搭載の交通系ICカードが採用される予定だ。

1号線は駅が14カ所あり、予想利用客約17万人のうち相当数が交通系ICカードを利用する見込み。今後はバスなどへの採用も働きかけていく。

ソニーはベトナム市場を重視し、昨年、同国の通信事業者ビッテル・テレコムと提携した。日本のスイカのように、乗車券だけでなくコンビニエンスストアなどで電子マネーとしても使えるよう決済インフラ構築も支援する構えだ。

アジア市場では、1997年に香港でフェリカ搭載の「オクトパスカード」が導入され、一枚のカードで地下鉄やフェリー、バスなど大半の交通機関を利用できる。インドネシアの鉄道ケレタ・コミューター・インドネシア(KCI)でも2015年から利用されている。ソニーはこうした実績をてこに、アジア諸国への売り込みを強化する。
2018.3.3 06:05
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180303/bsj1803030500001-n1.htm