https://jp.reuters.com/article/2018-views-adair-turner-idJPKBN1EY0T3

2018年1月10日 / 03:32 / 9時間前更新
アデア・ターナー 元英金融サービス機構(FSA)長官/インスティテュート・フォー・ニューエコノミックシンキング会長

[東京 10日] - 根強いデフレ圧力と公的債務問題に対して日本が取り得る最も有効な打開策は、中央銀行が財政赤字を穴埋めする「マネタリーファイナンス」を国民に向けて明示的に実行することだと、元英金融サービス機構(FSA)長官のアデア・ターナー氏は述べる。

具体的には、政府が2019年10月の消費増税を延期した上で2020年代半ばまで大幅な財政赤字を出し続ける一方、日銀は政府による国債発行とほぼ同じペースで国債購入を続け、かつその一部を無利子の永久債としてバランスシートの資産に計上し、実質的に「消却」すべきだと説く。

同氏の見解は以下の通り。

<「リカーディアン均衡」から脱却を>

日本政府と日銀に対する提案は3つある。第1に、政府は2019年10月に予定している(8%から10%への)消費税率引き上げを再延期し、高水準の財政赤字を計上し続けるべきだ。民間貯蓄超過を穴埋めするためには、相当規模の公的赤字が2020年代半ばまで必要なことを甘受すべきである。

第2に、日銀は、政府による国債発行とほぼ同じペースで国債を購入し続けるべきだ。そうすることで、日銀以外の主体が保有する国債が増えないようにする必要がある。

第3に、日銀は、保有国債の一部を無利子永久国債としてバランスシートの資産に計上し、実質的に「消却」すべきだ。併せて、一般企業グループにおける連結決算と同じように、政府と中銀を会計的に一体として捉える統合政府の考え方に従って、日銀保有分を公的債務から差し引いて考えることも強調すべきである。公的債務負担が実際のところは、よく言われている国内総生産(GDP)比250%よりも大幅に低い水準であるならば、国民のマインド面にポジティブな影響を与えるだろう。

これらの政策の組み合わせは、根強いデフレ圧力と公的債務問題に対して、日本が取り得る最も有効な打開策になると考える。日本は、追加的な政府支出の効果が将来の増税予測によって相殺されるという「リカーディアン均衡」にはまってしまっている。しかも、かなり強いリカーディアン均衡だ。この罠から抜け出すためには、(中央銀行が財政赤字を穴埋めする)「マネタリーファイナンス」を国民に向けて明示的に行う必要がある。
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