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2017/12/28
安井 孝之 : ジャーナリスト・Gemba Lab代表

日本経済団体連合会(経団連)の次期会長に中西宏明・日立製作所会長が就任するという新聞報道が相次いでいる。経団連は次期会長人事について沈黙を続けているが(12月27日時点)、年明けにも正式発表となる見込みだ。4年ぶりの新会長の誕生となるが、ここ10年ほど経団連の地位は低くなるばかり。本命・中西氏の会長就任で、地位挽回はできるのか。

11月中旬、「中西氏、次期経団連会長に内定」というニュースを聞きつけた人から、早くも日立製作所にはお祝いが送られたという。榊原定征・経団連現会長(74)からの打診はまだ受けていなかったため、中西氏は困惑した模様だ。その後は記者がいる公の場に一切姿を見せていない。ただ、中西氏は次期会長候補の大本命であることは衆目が一致するところと言ってよいだろう。

会長人事はどう決まる?

現在の榊原氏、その前の米倉弘昌・住友化学会長(当時)は審議委員会議長から会長に就任するという異例の形だったが、通常は副会長から昇格する。現在の副会長は18人。会長が次期会長を指名する際、「メーカー出身者が望ましい」という不文律がある。戦後日本の経済成長を引っ張り、雇用を多く抱えているのは製造業という考え方が基本にあるからだ。

榊原氏もその不文律を踏襲する意向で、メーカー出身の中西氏、宮永俊一・三菱重工業社長、十倉雅和・住友化学社長、進藤孝生・新日鐵住金社長、山西健一郎・三菱電機会長、早川茂・トヨタ自動車副会長の6人から選ばれる公算が高い。

メーカー出身の6人をみると宮永氏は小型旅客機(MRJ)の開発が順調でないこと、十倉氏は米倉氏が住友化学出身だったこと、進藤氏、山西氏、早川氏は副会長1期目で時期尚早であるため候補から外れる。結局、中西氏しか候補者はいないというのが実態である。

経団連人事をめぐり、4年おきの年末年始に新聞紙面をにぎわすのはマスコミの恒例行事だが、毎回、その報道価値は下がり続けている。

かつて経団連会長が財界総理と呼ばれた頃は、名物会長がいた。第一生命、東芝社長を経て1950〜60年代に会長を務めた石坂泰三はその代表格だ。時の大蔵大臣(財務大臣)に「もう君には頼まない」と啖呵(たんか)を切ったという逸話もある。

ほかにも、石川島播磨重工業(現IHI)と東芝の社長を務めた後、1970年代に経団連会長となった土光敏夫も「メザシの土光さん」と愛されていた。彼らのように、与党、自民党に対しても「カネも出すが、口も出す」と丁々発止で物申す経団連会長はもう何代も出ていない。
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