ファッションデザイナーのラルフ・ローレン氏が、自身の築き上げたファッション小売り帝国の支配権の共有を目指した最初の取り組みは失敗に終わった。当時、新たに任命した最高経営責任者(CEO)はわずか1年半で会社を去った。両者はともに、クリエーティビティーの分野で衝突があったことを認めた。

 そして今、ローレン氏は再び社外の人材の力を借りてラルフ・ローレンの再興を図ろうとしている。7月に、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で経験を積んだパトリス・ルーヴェ氏をラルフ・ローレンのCEOに任命したのだ。

 しかしローレン氏が同社を去るわけではない。この件に詳しい関係者によると、ローレン氏は引き続きニューヨーク・マンハッタンの本社で週に4日のペースで執務し、経営に深く関与している。そして、同社の事業のクリエーティブな分野について、自身が支配権を握り続けることを明確にしている。

 新CEOに決定権なし

 ルーヴェCEOの契約には、ルーヴェCEOの自由を縛るような条件が含まれている。この契約によると、ローレン氏が最高クリエーティブ・ディレクターの座にとどまり、ブランドやクリエーティブ分野、そしてデザインやマーケティング分野の上級幹部の採用に関してローレン氏が最終的な決定権を持つ。5月に退任したステファン・ラーソン前CEOにはこのような制約はなかった。

 ルーヴェ氏は8月のアナリスト向け会見で、ローレン氏が事業のクリエーティブ分野に責任を負う一方、自身は戦略、実行、業績に責任を負うと説明した。

小売り市場の不安定な状況が続く中、ラルフ・ローレンは3年連続で既存店売上高が減少しており、同社の一連の動きを疑問視する声が上がっている。小売業界の専門家らは「ラルフ・ローレンは威信の失墜した同ブランドを復活させるために、新鮮な考え方を取り入れることもできたはずだ」と指摘する。同ブランドを代表する「ポロ・ラルフ・ローレン」のポロシャツでさえ以前のようには売れず、ヴィンヤードヴァインズなどの流行に乗ったブランドに押されている。

 インスティネットのアナリスト、サイモン・シーゲル氏は「ローレン氏が象徴的なビジョンを持っていて、素晴らしい功績を上げてきたことは明らか。とはいえ小売業界は進化しており、それに対するレスポンスという点でラルフ・ローレンはライバル企業に後れを取ってきた。そこが課題だ」と述べた。

 コンサルティング企業のインターブランドによると、ラルフ・ローレンは今年、2011年以降で初めて世界の上位100ブランドから外れた。マンハッタンの5番街にあるポロの旗艦店を含む閉店が続き、株価も13年のピーク時から50%以上も下げている。

 商品復刻+定価販売

 ローレン氏はファッション小売りの第一線で50年以上にわたり活躍してきたが、ラルフ・ローレンは他の小売り企業と同じく、実店舗からオンラインショッピングに向かう流れに大きな打撃を受けてきた。ラルフ・ローレンはT・J・マックスやメイシーズなどの百貨店に売上高の40%以上を依存しているが、百貨店業界はオンラインへの流れの中で値引き販売を余儀なくされている。
以下ソース
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/171127/mcb1711270500006-n1.htm