日中経済格差はどうなっていく?
それでは、中国と日本の経済規模の格差は、今後どうなるのか。以下では、中国と日本の経済成長率について、かなり慎重な数字を想定してみる。

具体的には、(1)中国は実質GDP4%、インフレ率2%、つまり名目GDP6%で伸び続ける、(2)日本は過去20年余りと同様名目GDPがゼロで伸びない、という想定である。なお、これは筆者による投資家としての予想ではなく、将来を想像する頭の体操として、両国ともに控え目に想定していることにご留意いただきたい。

実際には、中国の実質GDP成長率は2018年も6%台を保つとみられ、過大推計となっている分があるとしても、慎重な想定であることはご理解いただけるだろう。

2017年から2025年にかけて上記の想定のように日中経済の経済成長率が推移すると、中日の名目GDPの格差は現在2.3倍から、2025年の近未来には3.5倍まで拡大する。日本の隣国の中国は、3〜4倍の経済大国となる。

今の米国と同規模の経済、軍事力を持つ国が隣に登場するわけだ。米国一辺倒ではなくなり、日本の外交、軍事政策は大きく変わらざるを得なくなるだろう。

一人当たりGDPは日本のほうが上だが…
一方で、国民の経済的な豊かさは、国全体の経済規模ではなく、「一人当たりGDP」でみるのが妥当だ。2016年時点の一人当たりGDPは、日本が3.9万ドル、中国が0.8万ドルと日本のほうが5倍高い。

現状、中国は経済・地理的な規模が大きく、そして都市部と内陸部にきわめて大きな所得格差があるため、平均的な中国人の経済的な豊かさはかなり低い。既に、上海などの所得水準は日本を含めた先進国と変わらないが、取り残された地方の農村部は相当の貧困状態であることを意味するわけである。

先ほどの頭の体操と同様に、今度は、一人当たりGDPについて、2017年以降中国5%、日本0%で伸びないという「中国楽観、日本悲観」の想定を置いてみよう。すると、2049年には一人当たりGDPベースでも、中国が日本を追い抜くことになる。

これは、かなり極端な想定である。ただ、日本は1990年代半ば以降過去20年以上にわたり、経済政策の失政によって先進国の中でも突出して「一人当たりGDP」が停滞してきた。

具体的には、日本は1990年代半ばまで、米国よりもやや高い水準の一人当たりGDPを保っていた。ところが、1990年代後半にデフレが定着すると状況が大きく変わる。

他の先進国では一人当たりGDP水準は上昇基調をたどるが、日本はまったく上昇しなくなり、2000年前後から、米国、香港、オランダ、台湾、ドイツ、フランスなどにつぎつぎと追い抜かれた。2010年半ばからはやや持ち直し、2016年時点ではフランス、英国と肩を並べる約4万ドルの所得水準となっている。

日本以外にGDPを伸ばした米国はほぼ6万ドルで、1995年から2倍に高まっている。かつてはほぼ同水準だった日本は1.3倍しか伸びず、日本の一人当たりGDPは現在、米国の7割程度にとどまっている。米国だけではなく、ドイツなどほとんどの先進国は、過去20年で約2倍まで所得水準を高めている。

2016時点で日本より一人当たり所得水準が低い主要国は、韓国、スペイン、イタリア、ギリシャなどがある。韓国は1990年代半ばには1万ドルの低水準だったのが、過去20年で約3倍と急ピッチでGDPが伸びており、日本に追いつくのは時間の問題かもしれない。

このように、過去20年日本経済がたどった「黒歴史」を振り返ると、2050年には、一人当たりGDPでも中国に追い抜かれることも、ありえないことではないと筆者は考えている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53401?page=2