Mozillaが総力を挙げてFirefoxの高速化を実現しようとしていると言って過言ではない「Quantumプロジェクト」の、最初の成果が組み込まれた「Firefox Quantum」が、11月14日に公開されます。

これに先立ち、Mozilla Corporationのコアブラウザー担当プロダクト管理ディレクター ジェフ・グリフィス氏と、コアブラウザー担当 シニアプロダクトマネージャ シンディ・シャン氏が来日し、記者向けの説明会を行いました。

MozillaはQuantumなどによるFirefoxの改善を通じて、2020年までにWebブラウザにおける20%のシェア獲得を目指しているとのことです。

Quantumプロジェクトは昨年からMozillaが取り組んでいる、Firefoxを高速化するプロジェクトの総称です。

サブプロジェクトとして、CSS関連の「Quantum CSS」(別名「Stylo」)、レンダリングエンジン関連の「Quantum Render」、GPU関連の「Quantum Compositor」、DOM関連の「Quantum DOM」、ユーザーインターフェイスなど上記でカバーされない領域を対象とする「Quantum Flow」などがあります。

さらにQuantumプロジェクトにおいてCSSエンジンやレンダリングエンジンなどを記述しているプログラミング言語である「Rust」もMozillaが中心になって開発したものです。

Rustによって、並列処理に強く、クラッシュしにくく安全で高速なプログラムの記述が容易になっており、これがQuantumプロジェクトを推進するうえで重要な位置を占めています。

また、ジェフ・グリフィス氏の説明によるとQuantum FlowにはFirefoxのJavaScriptエンジンであるSpiderMonkeyの高速化に関連する改善も数多く含まれているため、QuantumプロジェクトはWebページの描画を高速にするだけでなく、JavaScriptの実行速度の向上にも貢献するとのことです。

このQuantumプロジェクトの成果によるFirefoxの高速化の度合いを、Mozillaはいくつかの資料で示しています。

その1つは、ベンチマーク「Speedmeter 2.0」で、Firefox 52と比べて2倍以上高速になったという結果をたたき出したことです。

Mozilla社内の実験では、1691タブをFirefox起動時に開く起動時間が、これまで8分近くかかっていたものが、15秒に短縮されたとも説明されています。
こうした高速化は、マルチコアに対応した分散処理の実現、フォアグランドになっているタブの
優先処理などによるもので、またGPU処理のプロセスを分離したことで安定度の向上なども実現しています。

また、同社はFirefox Quantumのベータ版とChromeとのスピード比較動画も作成。Chromeに引けを取らないスピードをアピールしています。
https://www.youtube.com/watch?v=YIywpvHewc0
http://www.publickey1.jp/blog/17/firefox_quantum1114mozilla.html