マッキンゼー(あるいは「ザ・ファーム」というのが、従業員のお気に入りの呼び方だ)は、野心を持って学校を卒業した人たちにとって、働きたい職場として神秘的なほどの人気を誇っている。

ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人たちがいちばん多く入社している会社で、2位のゴールドマン・サックスを大きく引き離している。影響力のあるキャリア・サイトVaultでは、過去10年間にわたり、働くのに最も誉れの高いコンサルティング会社、第1位になっている。

創業者はジェームズ・O・マッキンゼー

会社の設立は1926年で、創業者はジェームズ・O・マッキンゼーだ。設立当初から、彼のビジョンは最高の人材を集め、一流のクライアントのために働く、というものだった。マッキンゼー自身、シカゴ大学の教授だった。そして創業から6年後、マービン・バウワーと手を組むことになった。

彼はハーバード・ロー・スクールとハーバード・ビジネス・スクールの両
方を卒業し、名門法律事務所で働いていた。激動の数年(失敗に終わった合併や創業者マッキンゼーの突然の死、社内の分裂など)を経て、1939年にバウワーが、今日私たちが知っているアイコン的企業の基礎を、新たに構えたニューヨーク・オフィスで築いた(シカゴのオフィスは、A.T.カーニーとして運営を続け、現在でも一流企業にコンサルティング・サービスを提供している)。

マッキンゼーには毎年、膨大な数の入社希望者がいる。募集人数の何倍もの数だ。そしてその採用プロセスは業界で、最も厳しいと言われている。さまざまな国の優秀な人たちが、なぜ世界中を飛び回ったり、週60時間以上も働いたりすることも珍しくない環境に身を置きたがるのだろうか??

答えは単純だ。業界の最高の人材が集まっている集団で、学びたいからだ。同社のあるコンサルタントは言う。「やりがいのある環境よ。周りの人たちは、私の成長を重視してくれている。マッキンゼーでの6カ月間で、学校や大学で学んだ8年間よりもプロとして成長できた」。

選考の最初のステップは履歴書のレビューだ。分析能力を見るのはもちろんのこと(難易度の高い専攻、一流大学、優秀な成績、あるいは優良企業での職歴)、チームや対クライアント、リーダーシップなどのスキルを伸ばせそうかも考慮される(大学在学中にチームをまとめたり、新しいプロジェクトを立ち上げたりするような、リーダーシップを発揮する活動をしていたかどうか)。インタビューに招かれた候補者は、2回から3回、それぞれにいくつかの「ケース・インタビュー」を集中して受けることになる。

インタビューはコンサルタントが直接行う。ケース・インタビューでは、抽象的かつ現実的な状況が提示され、複雑な問題に対し、素早く考えを組み立てて答えを導き、それを伝える能力が試される。

厳しい体験だというのもうなずける。候補者たちがインタビューに備えて何カ月も前から準備をするのはよく知られていることだが、それでも第1ラウンドの途中で挫折してしまう者が後を絶たない。
http://toyokeizai.net/articles/-/191883