NECは23日、人工知能(AI)を活用した病院経営改善の実証実験を実施し、成果が出たと発表した。脈拍などの生体データの変化から、患者の徘徊(はいかい)やベッドからの落下を事前に予測する。IT(情報技術)を通じて医療現場の負担を軽減する。

 実験は医療法人社団KNI(東京都八王子市)と共同で実施した。患者が身につけている時計型センサーで体温や脈拍などのデータを収集・解析し、「不穏行動」と呼ばれる症状の予兆を検知して看護師に知らせる。不穏行動とは急性の錯乱状態で、ベッドから落下するなど事故になることも多く、入院の長期化につながりやすい。

 NECはAIの一種である機械学習で不穏行動が起きる前の特徴を抽出した。過去のデータを学習させるため、新しい患者にも適用できる。実験では7割の患者の予兆を検知できた。医療スタッフが気づきにくい傾向を見つけだし、事前に予防措置をとることが可能になる。

 入院翌日に電子カルテ情報から、退院先がどこになるかをAIで予測する取り組みも始めた。緊急性の高い病棟からリハビリ施設に移動するタイミングを高い精度で予測する。早い時期から退院・転院の調整ができる。

 12月に開院する八王子市の北原リハビリテーション病院の新棟で実験を続ける。高齢化で医療・介護現場の人手不足感は高まっている。NECはAIによる業務効率の改善が、診療科目を問わず実用化できるかどうか見極め、数年以内の実用化を目指す。
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