米ライドシェア大手のリフトは19日、グーグル系のベンチャーキャピタル(VC)から10億ドル(約1126億円)の出資を受けたと発表した。グーグル系VCから取締役も受け入れる。グーグルはリフトと競合するウーバーテクノロジーと機密情報の扱いを巡り係争が続く。今後自動運転などでリフトとの協業が進みそうだ。

 資金の出し手はグーグル持ち株会社のアルファベット傘下のキャピタルG。リフトによると今回の出資で同社の企業価値は110億ドルに膨らむという。キャピタルGはパートナーで元グーグルのコーポレートデベロップメント担当だったデビッド・ロウイー氏を取締役として派遣する。

 グーグルにとって今回の出資はウーバーからリフトへの「乗り換え」だ。グーグルは2013年に傘下のVCを通じてウーバーに出資しており関係を深めてきた。ただ、ウーバーがグーグルも手掛ける自動運転技術の開発を本格化させたことで関係が悪化。2月には知的財産の侵害でグーグル系のウェイモがウーバーを訴えた。

 グーグルはウーバーの競合であるリフトとの関係を深めることで「ウーバー包囲網」を強めていくと見られる。自動運転開発を手掛けるウェイモとの協業はライドシェア企業ではリフトを軸に進みそう。リフトも7月に自動運転車の開発部門を立ち上げており、方向性は一致している。

 グーグルとリフトの接近はライドシェアを巡る各社の提携にも影響を及ぼしそうだ。リフトにはゼネラル・モーターズ(GM)が5億ドルを出資しているが、リフトは技術の独占を求めるGMの姿勢に反発している。リフトはフォード・モーターとの提携もこのほど発表したばかりだ。

 またウーバーに対してはGMの自動運転部門が接触を図っていると一部米メディアが報じている。アジアを含めたグローバルなライドシェア事業を模索するソフトバンクによる出資も来週中には決まりそうだ。創業者のトラビス・カラニック氏が追放されるなどトラブル続きの同社だが、企業価値は700億ドル近くとされるなど期待値はなお高い。

 ライドシェアを軸に自動車メーカーとネット企業が交錯を繰り返す――。グーグルのリフトへの出資はその動きをさらに加速させそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22489540Q7A021C1000000/