どん底の時期を乗り越え、2018年3月期に営業利益5000億円という悲願達成に向けて着々と歩を進めるソニー。その象徴の一つが、赤字続きだったテレビ事業の復活だ。ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)、つまりテレビやオーディオなどの事業を統括するキーマン、高木一郎執行役が日経ビジネスなどの取材に応じた。市場に投入したばかりの有機ELテレビや年内に日本で発売するAI(人工知能)搭載スピーカーについて、その戦略や展望を語った。主なやり取りは以下の通り。

6月に国内で発売した有機ELテレビの手ごたえについて。

高木一郎氏(以下、高木):直近で50%以上の国内シェア(金額ベース)を取ることができています。弊社がシェアを取りすぎているから、他社が苦戦しているんじゃないでしょうか(笑)。ただ、パネルの供給量が限られているので、「液晶テレビの代わりにどんどん売っていくんだ」ではなく、しっかりと評価してくれる顧客に絞り込んで売っていくべきだと考えています。

ーー4Kテレビも低価格商品が投入され、液晶テレビと同じように価格競争に巻き込まれる、という見方もあります。また、テレビ用の有機ELパネルを供給できる会社は韓国のLGディスプレーしかなく、調達に不安が生じる可能性もあります。

高木:どこからパネルを買っているかは言えませんが(笑)、有機EL市場が構造的に液晶テレビと同じようになるとは思っていません。当面、供給不安はないと思いますし、万が一制限されたらされたなりの商売の仕方があると思っています。

ーー高度経済成長期に「三種の神器」と言われ、長く家電の王様として君臨してきたテレビですが、消費者のライフスタイルの変化はこれを大きく変えています。「未来のテレビ」はどんなものになるのでしょうか。

高木:テレビは長らく、放送波による映像を映すだけの「受像機」でした。放送業者が唯一の映像の供給元で、テレビを牛耳っている時代でした。それが終わってテレビは情報発信のための「インテリジェントデバイス」となり、さらにその使い方、定義の仕方がそれぞれの家庭や個人によって違ってくるのだと思います。

 動画配信大手の米ネットフリックスなどを見ても分かるように、インターネット経由で優良コンテンツが配信され、それを楽しみたいというニーズが増えています。実は毎年、1〜1.5インチずつテレビ画面の平均サイズが大きくなっているんです。ここに、テレビ業界そのものが発展する可能性があると考えています。

ネットを介して上質なコンテンツを供給するサービスが増え、それに応じてテレビ画面のサイズも大きくなる。これが、ここ数年で起きている変化です。そうなると、もっと大画面でコンテンツを見たいという人が増え、その特徴に合わせたテレビが欲しい、という流れになる。だから映画などに向いている有機ELテレビが旬を迎えているわけです。

 コンテンツの進化が、テレビ市場の変化を主導していく形になっていくと思います。ハードがコンテンツを後追いしていく格好になるでしょう。ネットコンテンツ企業のパワーが絶大なので、これとハードが組み合わさった時のシナジーの発揮に、業界全体で取り組むべきだと考えています。お客様も高画質、高音質についてきてくれています。我々は音と映像で生きてきて潰れかかりましたが(笑)、この音と映像はまだまだ進化の途上にあります。
以下ソース
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/101300749/