日本からグアムへ渡る航空便が続々と休止している。

 米デルタ航空は、来年1月8日から週12便を運行していた成田―グアム路線を運休する。関西国際空港、中部国際空港の路線は昨年に運休を決めており、日本からグアムへの路線を完全に撤退した。

最大の路線数を保持する米ユナイテッド航空は1日3便ある成田発着便こそ維持するものの、来年1月15日以降、新千歳―グアム(週2便)の運休を決定した。さらに仙台、関空、中部などから運行している便に関しても、この10月末〜2018年3月末までに需要にあわせて100便を運休する方針だ。

■ピーク比3分の2まで減少

なぜ休止が相次ぐのか。背景には、日本からの観光客の減少がある。グアムにおける日本人の来島者は1997年の111万人をピークに、2016年には74万人まで減少。航空会社の撤退は以前から続いており、その結果、グアム行きのツアー価格が上昇、さらなる観光客減という”負の循環”に陥っている(詳細は今年3月配信した「サイパンとグアム、日本人が消えた楽園の今」を参照)。

 さらに拍車をかけたのが、北朝鮮によるミサイル発射計画だ。

 香港のLCC(格安航空会社)・香港エクスプレスは10月下旬から中部―グアム路線の就航を予定していたが、2018年夏休みまで就航を延期した。理由は「同地域の地政学上の懸念を考慮」したためという。

 面積の約3分の1を米軍基地が占めているグアムは、沖縄・普天間基地からの海兵隊の移転も予定されている重要な拠点の一つ。北朝鮮は8月9日、そのグアム周辺にミサイルを発射する作戦を検討していると声明を発表した。

 グアム政府観光局は北朝鮮がミサイル計画を公表した8月9日、「グアムは安全な渡航先であると保証する」というジョン・デイサン・デナイト観光局長の声明を発表。さらに8月21日に局長とグアム副知事が来日して会見を開き、「米軍の守りは万全で、ミサイル着弾の可能性を0.000001%と伝えられている」と語った。

 だが、日本人にとってはなじみ深い南国のリゾートで突如、こうした騒動が持ち上がったことで、修学旅行などはキャンセルが相次いだ。

8月にグアムを訪れた日本人来島者数は6.8万人(同13.9%減)と大幅に減少。比較予約サイト「トラベルコ」を運営するオープンドアが毎月発表している海外ツアー検索人気ランキングによれば、この9月にグアムは第3位(前年同月は2位)に後退、8月対比では検索数が25%減ったという。

 ただ、現地でニッコーやハイアットリージェンシー、ヒルトンなど有名ブランドのホテル5軒を所有・運営する最大手ホテル運営会社のケン不動産リースによれば「運営するホテルにおいては特段大きな影響は出ていない。現地に特段変わった様子は見られず、地元への混乱はないという見解」(会社側)。

 日本における出先機関のグアム政府観光局も「グアム政府と観光局は平和な日常が続いていることを声明文や記者会見などを通して発表しているが、日本において浸透しているとはいえず、加熱した報道が一般の方々に与えている影響のほうが大きい」と困惑ぎみだ。

 実際に8月の来島者数総数で見ると、前年をやや下回ったものの8月としては史上2番目の14.3万人(前年同月比0.7%減)を記録。国別で見ると大幅に増えたのは、日本よりも北朝鮮に近い韓国人だった。韓国からの8月の来島者数は5.8万人と、前年同月より24.5%も増えた。

 韓国では6社目となるLCCのエアソウルが9月中旬にグアムに就航。時期にもよるが、もはや大手航空券の予約サイトでは、東京からの直行便が約6万円なのに対して、日本から韓国を経由してグアムに向かう場合は3〜4万円台のケースもある。

 こうした韓国の旺盛な旅行需要を取り込み、グアム全体の来島者数は2017年1〜8月で105万人(前年同期比4%増)と過去最高を記録している。同期間に日本人の来島者数が44.8万人(前年同期比10%減)だったのに対し、韓国は43.8万人(同25.7%増)。このまま行けば、通年でついに韓国が上回りそうだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171015-00193089-toyo-bus_all