十月二十二日投開票の衆院選は、野党の再編が急展開で進んでいることで「政権選択選挙」の色合いが強まった。これは、投票日には約四年十カ月となる安倍政権を続けるのか、代えるのかを選ぶことでもある。判断材料の第一歩として、二〇一二年十二月の第二次安倍政権発足以降、この政権が何をやってきて、その結果何が変わったのかを四回にわたって点検する。

「日本経済の停滞を打破し、マイナスからプラス成長へと大きく転換させた」

安倍晋三首相は衆院解散を表明した今月二十五日の記者会見で、経済政策の総称「アベノミクス」の成果を強調した。実質国内総生産(GDP)は六・四半期連続でプラス成長。安倍政権は、戦後二番目に長い「いざなぎ景気」を超えた可能性が高い、と胸を張る。

企業の業績改善を後押しすれば、企業は設備投資や従業員の賃上げに積極的になり、消費も活発になる−。こうした経済の好循環を、安倍政権は二〇一二年末のスタート時に描いた。
 
では、国民のくらし、お金回りの停滞は打破されたのか。「いざなぎ」超えとの掛け声とは裏腹に、賃金、消費に目を向ければ、盛り上がりは見えない。「実感なき成長」は統計指標にもくっきりと表れている。
 
基本給に当たる今年七月の所定内給与は、政権発足時と比べてほぼ横ばい。そうした中で消費税率を、一九年十月に予定通り8%から10%に引き上げるかどうかも問われている。
 
アベノミクスの主力は一貫して、日銀の大規模な金融緩和だ。日銀は世の中に回るお金の量を増やすため、銀行から国債を買う代わりに銀行に渡すお金の量を大胆に増やした。政権発足時の三倍以上に膨れた。
 
お金を膨大に流し込んだことが、円安効果を生んだ。円の通貨としての価値が下がったからだ。この恩恵を受け、日本の基幹産業である自動車業界を中心とした輸出企業は、円で計算した売り上げを伸ばし、収益を改善した。
 
ところが、企業はこのもうけを利益の蓄積である「内部留保」としてため込む。その額は今年六月末で三百八十八兆円。過去最高を記録し続ける。
 
企業がお金をため込むのは将来への不安が拭えないからだ。アベノミクスが描いた、多くの働く人たちの賃金上昇と消費拡大の理想は、実現したとは言い難い。限界は明らかなのに安倍政権はアベノミクスを誇り、抜本的な見直しの機運はない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/images/PK2017093002100047_size0.jpg
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201709/CK2017093002000139.html