30期連続増収増益の家具メーカー・ニトリホールディングス。創業者の似鳥昭雄会長は、昨年2月に白井俊之氏に社長の座を譲ったもののパワーが衰えることもなく、今も現役バリバリだ。似鳥会長にニトリの現状、そして日本の小売り・流通業界の未来を聞いた。(聞き手は深澤 献・ダイヤモンドオンライン編集長)

── 一昨年4月のプランタン銀座を皮切りに、12月に新宿、3月には池袋、そして今年6月30日には渋谷公園通り店と立て続けに新店をオープンしました。ニトリは郊外のロードサイド店舗のイメージが強いのですが、新たに進出した大都市圏の店舗の感触はいかがですか。

似鳥 うまくいっています。渋谷は9階建てで約1510坪もあり、駅から6分程度という好立地です。1階から5階は季節雑貨やルームウェア、クッションやカーテンなど家具ではないインテリア関係の「ホームファッション」の品ぞろえを充実させています。郊外の店舗に車で買いに来るお客さんと、大都市に電車でやってくるお客さんは違いますから。ただ、例外的に渋谷では家具もよく売れる。家具の売場面積は4割くらいですが、売り上げの半分は家具になっています。

――「家具屋」という認識はあまりないんですね。

似鳥 米国同様、家具はもう必要ない時代に入ってきちゃってますから。最近の日本の住宅では、収納が備え付けてあるので、整理タンスや洋服タンスなど「箱物家具」を買う人は減っています。これは私が1972年、27歳の時に米国で目の当たりした光景です。その時から、日本も20〜30年すると家具が要らない時代が来るんじゃないかと思っていました。

 そこで、家具商品のラインナップの中心を「箱物」一辺倒から、机やベッドなどの「脚物」に変えると共に、ホームファッションを充実させてきました。去年の家具の売り上げは全体の39%、それに対しホームファッションが61%くらいできています。家具は毎年1%くらいずつ減ってきているのが現状です。

――以前、「ニトリは集中主義であり、多角化しない」とおっしゃっていましたが、考えを変えられたのですか。アパレルにもご興味があるそうですね。

似鳥 住宅関係も限界があるからねぇ。アパレルは、具体的に案があるわけじゃないけど、ホームファッションで繊維を扱っているので展開しやすいんです。色や、コーディネートの発想がホームファッションと一緒だから。ただ、衣料は流行や季節感がはっきりしているから、早め早めに企画しないといけないのでそう簡単ではないと心得ています。

 とはいえ、我々の家具やホームファッションもいつか限界がくるでしょうから、アパレルもチャンスがあれば挑戦できるように備えているんです。

――先を見据えた戦略としては「海外」もありますね。

似鳥 店舗は中国でどんどん増やしたいと思っています。日本は今500店舗ですから、中国は10倍の5000店舗はいけると思います。でも、賃金は今後10〜20年で日本並みになると思っていますので、中国がニトリの一番の課題ですね。

 製造拠点としては、国内で「安くていい物」を仕入れるのは限界があったので、中国、インドネシア、直近はベトナムへ工場を移転させながら自社で製造してきました。こうした自社工場で作る商品は、家具の売り上げのだいたい4割程度です。ベッドは5割くらいですが、ソファがまだ35%くらい。来年は今までやっていなかったダイニングテーブルもやりたいと思っています。

 多角化の面では、家具と相性が良い「住宅」に目を付けています。今年4月に中古住宅を買い取ってリフォームして売る「カチタス」という会社に出資しました。地方の空き家や中古物件を仕入れ、新築に近い状態にリフォームして売れば30代でも買える。“安くて品質が良い”というのがニトリの考え方と合致しているんです。

 去年は4500棟手掛けており、戸建て中古販売では日本一です。今後も1万、2万、3万棟と増えていくんじゃないかな。リフォームした家にニトリの家具をセットで販売するなど、提携効果が広がる可能性が十分あります。

 ヤマダ電機みたいに自社で新築まで乗り出すところまでは今のところ考えていませんが、住宅関係を拡大するノウハウが溜まれば、中国でもアジアでも世界中で展開することができるようになります。

以下ソース
http://diamond.jp/articles/-/143235