月末の金曜日に早期退勤を奨励して消費を喚起する「プレミアムフライデー」を巡り、官民で見直し議論が活発になっている。業務が集中する月末は企業が対応しにくく、広く普及しているとはいえないのが実態だ。20日の経済団体、業界団体の記者会見でも効果を疑問視する声が相次いだ。

日本商工会議所の三村明夫会頭は同日の会見で、プレミアムフライデーに関し「多くの商工会議所からは地域ごとの実情に合わせて活用した方がよいという声が多い」と述べた。例えば現在は退社時間を午後3時などとしているが、一律に決めるような運用は見直してはどうかとの考えを示した。働き方改革と個人消費の増加に向けて「実績をよく分析して考えてほしい」と強調した。

 特に大手製造業の懐疑論は根強いようだ。「造船のような製造業はチームワークで働くため、そぐわないと思う」。日本造船工業会の加藤泰彦会長は会見でプレミアムフライデーをこう評した。政府は導入を呼びかけたが、加藤氏が相談役を務める三井造船でも導入していないのが実情だ。

 一方で造船業界では、プレミアムフライデーが始まる前から勤務時間を自由に選べるフレックス制度を導入している企業は多く、働き方改革そのものは業界で広がっているという。加藤氏は「他業種でも我々と同じように考えているところが多いのではないか」と述べ、見直し論は歓迎する考えを示した。

 塩ビ工業・環境協会の角倉護会長(カネカ社長)も現状のプレミアムフライデーには懐疑的だ。同日の定例会見で「月末、特に締めの金曜日はメーカーとして忙しく、実感は伴っていない」と言及した。「月末から月初に変更しても変わらないのでは」とも述べた。

 日本貿易会の小林栄三会長(伊藤忠商事会長)は都内での定例会見で、「(プレミアムフライデーが)月末の多忙な時期で良いのかという意見もある」と指摘。「企業として、従業員として、取得しやすい時期が一番良い」と述べた。

 ただ、「色々な業界や立場で意見が異なるので、もう少し深掘りした議論をした方が良い気がする」として、具体的に好ましい実施時期への言及は控えた。同時に「働き方改革を進めないといけないのは確か。全体としての流れは決して間違っていないとは思う」と導入の背景には理解を示した。そのうえで「もう一段の検討と、(計画・実行・評価・見直しの)『PDCAサイクル』を回すことが必要だろう」と強調した。

 プレミアムフライデーを巡っては官民で見直しの議論が広がる。経団連の榊原定征会長は11日の記者会見で、プレミアムフライデーについて「(政策効果などを)総括しないといけない」と語った。世耕弘成経済産業相も15日の会見で「産業界や消費者の意見を聞きながら、見直すべきところがあれば見直したい」と表明している。

 三村氏が指摘したように、日本企業らしく横並びで早期退勤することの是非も問われそう。角倉氏の出身であるカネカは2年前から、1時間単位で有給休暇をとれる制度を設け、金曜日に午後3時に帰りたい人は帰れるようになっているという。同社には半日単位の制度はその前からあったが、1時間単位でより柔軟に休みを取れる。角倉氏は「子育て中の女性社員などに好評で、男性社員でも少し休んで病院に行く際に便利という社員もいる」と指摘する。こうした柔軟な制度も参考になりそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ20HAM_Q7A920C1000000/