パンディット氏は2007年から12年までシティのCEOを務め、08年のリーマン・ショックも
経験した。同氏は「AIやロボット、自然言語で起きていることの全てが、銀行のバックオフィスを
変える。多くの仕事が自動化される」と指摘した。

 シティ自体は16年3月、金融とIT(情報技術)を融合するフィンテックの成長が続けば、
15年から25年までの10年間で欧米の銀行員の3割が職を奪われると予測している。現在は
独立系投資会社を率いるパンディット氏の見立ては、古巣の予測よりも厳しいものだ。
フィンテックの急速な発展には国内外の金融関係者が危機感を覚えている。

 米金融界では、米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の
発言が有名だ。何事にも直前することで知られるダイモン氏は「シリコンバレーのベンチャーが
我々のランチを食べたがっている」との趣旨の発言を繰り返している。

 日本にも危機意識は広がる。三井住友銀行の高島誠頭取は5月の国際金融協会(IIF)の
春季総会で、フィンテックに関して「脅威、危機感を持っている」と語った。ベンチャー企業
などの異業種が金融分野に取り組むことについては、「新規参入者と(既存の)金融機関は
同じ規制のもとで監督を受けるべきだ」とけん制する。

 国内外を問わず既存の銀行は異業種にお株を奪われないために、独自の技術開発や
ベンチャーへの出資などに躍起だ。技術を活用すればするほど、業務の効率化が進む。
りそなホールディングスは4月公表の中期経営計画にデジタル化による「事務ゼロ」を
店舗の「ダウンサイズ」などとともに掲げた。

 麻生太郎金融相もフィンテックが与える金融サービスの変化について「銀行の支店も
そのうちなくなるだろう」と指摘したことがある。世界の好景気に支えられ、シティの
お膝元である米国を含め、今のところ金融界で大きな人員削減の動きは出ていない。
日本の大学生の就職人気ランキングでは、今も銀行は上位に位置している。