日本の「無子高齢化」は、政府が非常事態宣言を出すべき深刻度(河合 雅司) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
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2020年、日本人女性の半数が50歳以上に。2035年、男性の3人に1人、女性の5人に1人が生涯未婚に――少子高齢化が止まらない日本の未来に、いったいどんな事態が待つのかを年代順に描き、16万部を突破した『未来の年表』。その著者で人口政策の専門家・河合雅司氏が、このたびの第3次内閣改造に際して、少子化への無策ぶりを嘆く。
「家族の歴史」が途切れる

お盆休みの時期、親族が集まってお墓参りをする人も少なくないだろう。新幹線の混雑や高速道路の大渋滞もまた、夏の風物詩≠ニいったところだろうか。

だが、こうした光景もいつまで続くか分からない。少子高齢化の影響で、最近では親族が極端に少ないというケースも増えてきた。親族の中に子供がひとりもおらず、「一番若い人でも40代半ば」などといった例も珍しくなくなった。

言うまでもなく、自分がこの世に存在するのは、先祖がいたからである。代々引き継がれてきたそんな多くの「家族の歴史」がいま、途切れようとしているのだ――。

少子化をめぐる状況は極めて厳しい。2016年の年間出生数は100万人の大台を割り込み、97万6979人にとどまった(厚生労働省の人口動態統計月報年計による)。

100万人割れしたことだけでもショックだが、むしろもっと懸念すべきは、今後も出生数に歯止めがかかりそうにないことだ。これまでの少子化によって、出産可能な年齢の女性が、今後大きく減ることが確定的だからである。25〜39歳の女性人口は2065年には現在の半分ほどになる。これでは多少、合計特殊出生率が回復したとしても、とても出生数増にはつながらない。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、年間出生数は2065年に55万7000人、2115年に31万8000人にまで落ち込む。もはや、「跡継ぎのいなかった『○○家』が絶えた」といったレベルの話ではないことが分かるだろう。

すでに空き家や所有者不明土地の増大が社会問題化しているが、このままならば、やがて日本列島のいたるところに無縁墓が広がる。

日本の少子化がいかに厳しいかは数字が物語る。先に、昨年の年間出生数が90万人台になったことをご紹介したが、課題はそれだけではない。婚姻件数は戦後最少を記録し、30代以下の母親の出生数が軒並み前年を下回ったのだ。際立っているのが第1子で、1万8000人減となった。

母親の年齢別に見てみると、20代後半から30代で1万6000人近くも減っている。ただでさえ子供を産める年齢にある女性が少なくなっているのに、子供を持とうと考える人が少なくなったのでは、いよいよ出生数の減少が加速してしまう。

要するに、日本は「無子高齢国家」に突き進もうとしている。政府が非常事態宣言をしてもおかしくない危機なのである。

子供が生まれてこない社会には未来はない。その影響は、われわれの暮らしのあらゆる分野に及ぶ。具体的にどのような影響が生じるのかについては拙著『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』に詳しいので、是非そちらをお読み頂きたい。