http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ03HSK_T00C17A7TI1000/

2017/7/3 22:01

 経営再建中の東芝は3日、傘下のスイス電力計大手ランディス・ギアについて、9月末までをめどにスイス証券取引所で新規株式公開(IPO)による上場を計画すると発表した。同社の売却手続きも同時に進める。ただ債務超過の解消が喫緊の課題のなか、IPOで想定通りの資金確保ができるかは不透明だ。

 ランディス・ギア買収に名乗りを上げていた日立製作所と英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズは価格などの条件面で折り合わず、手続きからいったん撤退したもよう。買収にはまだ複数の海外企業やファンドが名乗りを上げているようだ。

 東芝はランディス・ギアについて様々な戦略的選択肢を検討していると表明しており、準備を進めていた。東芝はIPOに加え、売却手続きも並行させる。関係者によると売却額は2000億円以上を想定している。株式市場の動向などを勘案してIPOの手続きを中止する可能性もあるとしている。

 ランディスは電力制御用スマートメーター(次世代電力計)の世界最大手。東芝は産業革新機構と共同で2011年に23億ドル(当時約1900億円)で買収した。出資比率は東芝が6割、革新機構が4割。

 東芝は半導体メモリー事業については、産業革新機構、日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタルによる日米韓連合と優先的に交渉しているが、最終調整で難航している。

 半導体メモリー事業は2兆円規模での売却を目指している。東芝は債務超過解消と財務体質の改善のため売れる資産ならば聖域を設けずに売却を検討する考えだ。

 ランディスも高値で売却したい意向だが、日立・CVC連合がいったん買収から撤退するなど買い手は決して多くない。成長性が読み切れない部分があり、買収価値の算定が難しいとの指摘もある。売却がうまくいかない時のためにIPOという選択肢も進めざるを得ない事情がある。